はじめに・サマリー・インデックス
INTRODUCTION
はじめに ~世界が目指すネットゼロおよびネイチャーポジティブ~
気候変動や自然の損失など、地球環境をめぐる問題は年々深刻化しており、社会・経済にとって重大なリスクとして認識されるようになっています※1。気候変動については、2015年に「パリ協定」が採択され、国際的にネットゼロ・脱炭素社会に向けた移行が進んでいます。また生物多様性に関しては、2022年に「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」が採択され、2050年ビジョン「Living in harmony with nature(自然と共生する社会)」のもと、2030年までに「生物多様性の損失を止め反転させ、自然を回復軌道に乗せるための緊急的な行動をとる」という「ネイチャーポジティブ※2」を目指すミッションや、23の具体的なターゲットが定められました。
このような社会動向を踏まえ、当社グループは、世界が目指す「ネットゼロ」および「ネイチャーポジティブ」に向けて事業を通じた取り組みを着実に進めるとともに、当社グループにおける気候・自然関連の重要課題の把握と、情報開示を積極的に行っています。
※1 世界経済フォーラム1)参考文献より抜粋
今後10年間のリスクの深刻度ランキング | |
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1 | 異常気象 |
2 | 生物多様性の損失・生態系の崩壊 |
3 | 地球システムの危機的変化 |
4 | 天然資源不足 |
5 | 誤報と偽情報 |
6 | AI技術がもたらす悪影響 |
7 | 不平等 |
8 | 社会の二極化 |
9 | サイバースパイ・戦争 |
10 | 汚染 |
※2 2030年までのネイチャー・ポジティブに向けた自然のための測定可能な世界目標
出典:WWF

東急不動産ホールディングスの環境経営
- 当社グループは、社会課題を踏まえたマテリアリティを設定し、「環境経営」を全社方針とする長期経営方針を定めています。長期経営方針を推進し、ありたい姿を実現します。
- また当社グループは、創業時より様々な事業活動を通じて、持続可能な社会の実現と環境課題に取り組んでいます。2021年5月には、環境に寄与するライフスタイル創造などのマテリアリティに基づき、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を策定しました。
- 長期ビジョンでは、環境経営を大きな柱としており、「脱炭素社会」「循環型社会」「生物多様性」などへの取り組みを通じ、環境を起点とした事業機会の拡大を目指しています。
- 本レポートでは、TCFD★(気候関連財務情報開示タスクフォース)およびTNFD★(自然関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークや、移行計画に関する各種ガイダンスを参考に、当社グループの気候・自然関連課題および、その対応について説明しています。なお、気候・自然関連全般でMS&ADインターリスク総研株式会社と、自然関連課題については株式会社シンク・ネイチャーと協働して、検討・分析しています。
★ :「用語と解説」参照
当社グループの環境経営の歩み

★ :「用語と解説」参照
脱炭素・ネイチャーポジティブに向けた数字で見るハイライト

- ※1第三者認証後の確定値
- ※2共同事業など一部を除く
- ※3非住宅の大型保有物件(延床面積10,000m²以上)を対象。共同事業など一部除く
- ※4ZEB/ZEH Oriented相当以上の建物性能を有する東急不動産(株)の分譲マンション・オフィス等の施設件数割合(着工ベース)
- ※5持分換算前(開発中プロジェクトを含む) ※6 東急不動産(株)のオフィスビル・商業施設の新築大型物件
★ :「用語と解説」参照
【サマリー】気候・自然関連課題の統合的な開示
当社グループは、事業を通じて、気候・自然関連課題の解決に貢献すべく取り組みを進めています。気候変動の緩和・適応に向けては、温室効果ガス(GHG)の吸収源や、災害および極端な気象を緩和するものとして、豊かな自然が不可欠です。一方、気候変動は自然・生物多様性の損失の重要な要因の一つであるため、ネイチャーポジティブに向けても、気候変動の抑制が不可欠です。
このように自然関連課題と気候関連課題は相互に密接に関連していることから、TNFDで推奨されているとおり、当社グループは気候・自然の一体的な検討・取り組みを進めるとともに、フレームワークに沿った情報開示を行っています。
本レポートでは、気候・自然関連課題について効率的にご理解いただけるよう、これまでのTCFD提言に基づく開示、脱炭素社会への移行計画、TNFD提言に基づく開示、3つの開示内容を下図のとおり統合・集約しています。
この表は左右にスクロールできます
TCFD提言に基づく開示 | 脱炭素社会への移行計画 | TNFD提言に基づく開示 (TNFDレポート) |
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改訂履歴 |
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開示内容 |
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↓ 統合(2025年2月)
TCFD/TNFD提言に基づく開示(本レポート)
気候・自然に関するガバナンス/戦略/リスク・インパクト管理/測定指標・ターゲット/脱炭素社会への移行計画
本レポートでは、分かりやすさのために、「気候」「自然」のいずれのテーマに直接対応するか、そして「ガバナンス」「戦略」「リスク・インパクト管理」「測定指標・ターゲット」のどの項目に該当するか等を、各項の右上にアイコンで示しています。
【サマリー】本レポートでの開示内容の全体像
本レポートでは、具体的に以下の内容を開示しています。TNFD提言の推奨内容はAppendixを参照ください。
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開示の柱 | 開示が推奨される主な内容 | 気候関連開示 | 自然関連開示 |
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ガバナンス |
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戦略 |
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TNFDのLEAP★アプローチを踏まえ、以下の通り、当社グループの事業における、自然関連課題(依存・インパクト・リスク・機会)を特定しました。
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リスク・ インパクト管理 |
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測定指標・ ターゲット |
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- ※広域渋谷圏とは、東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅半径2.5kmのエリアのことを指します。
★ :「用語と解説」参照
【サマリー】気候関連のシナリオ分析
当社グループの4事業(都市・レジャー・住宅・再エネ)を対象にシナリオ分析を実施し、戦略に反映しています。

- 高い:連結営業収益の10%以上
- やや高い:当該事業ポートフォリオ営業収益の10%以上
- 中程度:当該事業ポートフォリオ営業収益の5~10%
- やや低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2~5%
- 低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2%未満
★ :「用語と解説」参照
【サマリー】自然へのインパクト・依存の概観および優先地域の設定
ステップ1)当社グループ全体の自然へのインパクト・依存の内容・重要性の把握
ENCORE★等のツールも踏まえ、全事業を通じた依存やインパクトの概観を把握しました。

インパクト
不動産開発・運営時の土地改変・占有など陸域生態系の利用
依存
資源等の供給サービス、自然による癒し・景観などの文化的サービス★
事業規模(売上規模)
ステップ2)各物件所在地における自然の観点での重要性の分析
当社グループの保有・運営する物件所在地について、自然の十全性★・重要性、水ストレスに関連する各指標を分析し、「広域渋谷圏」と「リゾート施設等13地域」を優先地域としました。

以下の場所での詳細分析を実施
- 広域渋谷圏
(2023年度開示) - 東急リゾートタウン蓼科
(2024年度開示)
★ :「用語と解説」参照
【サマリー】広域渋谷圏の都市開発事業におけるネイチャーポジティブへの貢献
広域渋谷圏における自然関連の依存・インパクト
優先地域の一つである「広域渋谷圏」の事業では、土地改変や占有などのインパクトを与えるとともに、浸水やヒートアイランド現象の緩和、自然による癒しや美しさなど、様々な面で自然に依存していることが分かりました。
このうち、土地利用・建物緑化による自然へのインパクトを(株)シンク・ネイチャーの分析ツールを用いて定量分析した結果、当社グループの広域渋谷圏における物件建設前後の生物多様性再生効果が、2012年度以降の物件からプラスとなっていることが分かりました。近年竣工の物件における、都市開発諸制度等による緑地面積の確保や、植栽樹種での在来種選定など、緑化の量と質の確保に向けた取り組みの成果が表れ、当社グループのまちづくりが、ネイチャーポジティブに貢献していると評価されております。
特に再開発事業の対象となっている物件は、緑地の量や質がこれまでの施設と比べ高い傾向にあり、今後も自然と共生したまちづくりを推進していきます。

【サマリー】東急リゾートタウン蓼科におけるネイチャーポジティブへの貢献
東急リゾートタウン蓼科における依存・インパクト
優先地域として分析した「東急リゾートタウン蓼科」の事業では、観光資源やレクリエーション機能、気候調整・災害緩和などの様々な面で自然に依存しています。またバリューチェーンを通じ、土地改変・占有をはじめとしたネガティブインパクトを与える可能性がある一方、森林管理などの取り組みによりポジティブなインパクトも与えています。このうち重要なインパクトの一つである施設開発・運営を通じた土地改変・占有の影響を測る指標として、開発開始以降の森林面積の割合の変化を(株)シンク・ネイチャーと協働で、定量評価しました。
空中写真・衛星画像からの森林面積の分析の結果、森林面積はゴルフ場や別荘建設等による落ち込みを挟みつつも、全体の推移としては回復傾向にあり、現在は最も回復した水準となっていること、森林を維持・回復しながらの事業運営により当社グループのリゾート開発・運営がネイチャーポジティブに貢献していることが評価されました(下左図)。
また「東急リゾートタウン蓼科」では、森林経営計画★を策定の上、間伐★などの森林管理に取り組んでいます。現在、森林を構成する樹木が高齢化していることから、今後は間伐を継続しつつ、老齢化したカラマツ林の一部皆伐★と植林を含む森林管理も検討していきます。
森林管理のあり方が生物多様性にもたらしうるインパクトについても定量評価を実施、「年間2ヘクタールずつ皆伐および植林する管理方法」を行う場合は、森林管理を行わず自然遷移に任せる場合と比べ、森林での生物種数の低下を大きく抑制できることが分かりました(下右図) 。こうした結果も参考に、引き続き適切な森林管理で、生物多様性の保全に努めていきます。


★ :「用語と解説」参照
【サマリー】リスク・機会の把握、サプライチェーン協働、取り組み/今後の方針
気候・自然関連のリスク・機会
シナリオ分析および依存・インパクト分析を踏まえ、当社の事業上、特に重要と考えられる気候・自然関連の移行リスク・物理的リスクおよび機会を整理しました。
様々な気候・自然関連リスクが想定される一方で、事業機会の獲得も多く期待できることが分かりました。
サプライチェーンにおけるリスク・機会、依存・インパクトへの取り組み
当社グループが関わる不動産業においては、開発から運営は長期間にわたること、かつ多くの関係者が関わるため、ステークホルダーと協働してサプライチェーン全体で気候・自然関連の課題に取り組む必要があると考えています。
- サステナブル調達方針
- 「気候変動への対応」「生物多様性の保全」など、「人権や労働に関する国際的な基準の順守・尊重」に加えて、環境への配慮を含めた「サステナブル調達方針」を定め、サプライチェーン全体で取り組みを推進しています。
- 森林破壊ゼロの取り組み
- 建設時に使用されるコンクリート型枠用合板パネルは、原産林における環境破壊や先住民からの土地収奪などの可能性が指摘される場合があります。当社グループでは、建設会社と連携し、コンクリート型枠用合板の持続可能性配慮木材(FSCおよびPEFC認証材並びに国産材等)利用率を2030年度までに100%とする目標を定め、分譲マンション等での認証材や国産材の利用を進めています。
気候・自然関連の当社の具体的取り組み
この表は左右にスクロールできます
項目 | 主な取り組み内容 | |
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気候関連 | 再生可能エネルギー事業、再エネ電力の導入・提供 | |
ZEB・ZEH、環境認証の取得 | ||
自然関連 | 都市開発事業 | まちづくり、都市緑化、緑化技術、植栽管理など |
ホテル・レジャー事業 | 森林経営、希少生物の保護、など | |
その他 | 外来生物対策、汚染・廃棄物削減、資源循環、水利用削減 |
今後に向けて
今後も引き続き、当社グループの気候・自然関連の依存・インパクト、リスク・機会の検討を深めていく予定です。特に、自然の観点も含めたシナリオ分析の検討を深めるほか、国際動向を踏まえた自然関連の指標・目標のあり方についても検討していく予定です。
【サマリー】脱炭素社会への移行計画
脱炭素社会への移行計画
当社グループは、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を策定し、2050年ネットゼロエミッションを掲げ、GHG排出量削減の長期目標を設定しています。同目標は、2024年7月に「SBTネットゼロ認定」を取得しました。
上記目標の達成に向けて、TCFDなどで提示されたガイダンスに沿った移行計画を、本レポート内で説明しています。
移行計画に基づき、再生可能エネルギー事業や、建物のZEB/ZEH化など、脱炭素化に向けた取り組みを推進しています。

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移行計画の要素 | 開示内容 |
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ガバナンス体制 |
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ロードマップ・施策 |
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リスク・機会 |
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指標・目標 |
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ステークホルダーエンゲージメント |
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開示にあたっての考え方(一般要件)
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一般要件 | 当社グループの考え方 |
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マテリアリティの適用 |
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開示のスコープ/ 自然関連課題がある地域 |
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他のサステナビリティ関連の開示との統合 |
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検討される対象期間 |
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先住民族・地域社会・ 影響を受けるステークホルダー とのエンゲージメント |
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INDEX
INTRODUCTION
気候・自然情報開示
ガバナンス
ガバナンス
「ガバナンス」では、気候・自然関連の依存・インパクト、リスク・機会に関する取締役会の監視や経営層の役割、自然関連課題に関連するステークホルダーエンゲージメントについて説明することが推奨されています。
当社の気候・自然関連のガバナンス体制については以下のとおりですが、当社グループは、取締役会にて、気候・自然関連目標等を承認し、進捗状況を監督する体制を構築しています。
- 取締役選任時は、取締役会全体で「環境・サステナビリティ」の専門性を具備することを意識しています。
- 経営陣の役割・責任を明確化し、気候・自然関連の重要課題に対し、責任を持って取り組んでいます。
主な組織の役割
- 代表取締役社長(委員長)および執行役員を構成メンバーとするサステナビリティ委員会を設置しています。年に2回「リスクマネジメント委員会」と共に定例会議を開催し、気候変動および自然関連課題を含む環境経営やサステナビリティの重要課題について計画立案・実績確認を実施しています。
- 取締役会は、当該重要課題や審議結果についてサステナビリティ委員会から報告を受け、進捗状況の監督・定期的なレビューを実施しています。
- 長期経営方針の中で「環境経営」を全社方針に掲げ、中期経営計画の中で3つの環境重点課題を設定し事業を通じて取り組んでいます。
- 気候変動に関しては、2020 年度には代表取締役社長の指示に基づき「2050年ネットゼロエミッション」目標を掲げました。2030年の目標は、2021年にSBT(1.5°C水準)認証を取得し、2050年までの長期目標は2024年にSBTネットゼロ認定を取得しました。
- 自然に関しては、国際動向も踏まえ、2023年に「生物多様性方針」を改訂し、生物多様性へのネガティブインパクトの回避・最小化、ポジティブインパクトを拡大することを掲げています。
- 2021年度より役員報酬に気候・自然関連課題を含むESG の取り組みを勘案しています。
体制図
- グループ経営会議、サステナビリティ委員会が連携し、環境経営に関する方針・目標(KPI)・行動計画を策定し、取締役会が監督しています。
- KPIに対する進捗状況のモニタリング・実績管理はサステナビリティ委員会にて実施しています。

人権・ステークホルダーエンゲージメント
TNFDでは、自然関連の依存・インパクト、リスク、機会の評価や管理において、自然との関連性が高い先住民族、地域コミュニティ、影響を受けるステークホルダーとの効果的かつ有意義なエンゲージメントが重要視されており、「ガバナンス」の側面で開示することが推奨されています。
また、当社グループが営む不動産事業で、住宅・オフィスビル・商業施設・レジャー事業の施設などの開発から運営は長期間にわたり、多くの関係者が関わることから、脱炭素化やネイチャーポジティブに向けて適切な対応を行うためにはステークホルダー(設計会社・施工会社・お客さまなど)と協働してサプライチェーン全体で取り組む必要があると考えています。
以下で、当社の事業・サプライチェーンでの、人権尊重やステークホルダーエンゲージメントについて紹介します。
人権の尊重
- 当社グループは、事業に関わるステークホルダーの人権を尊重することは事業を行ううえで不可欠であるとの考えのもと、「東急不動産ホールディングスグループ人権方針」を策定しています。「世界人権宣言」などの国際的な人権基準を支持し、サプライヤーと共に人権を尊重した事業活動を行っています。
- 人権に関する重要課題として、地域住民・先住民族の権利や、サプライチェーンを含めた強制労働・児童労働などの複数の課題を特定したうえで、人権デュー・デリジェンスの仕組みの構築や、人権リスクの未然防止・軽減に向けた取り組みを行っています。
- 新規プロジェクト候補もしくは既存事業においては、当社のリスク管理プロセスに則り人権尊重に関するリスクを継続的に評価することで、そのプロジェクト自体もしくは地域社会における事業活動に関係するステークホルダーの人権を尊重するように努めています。
ステークホルダーエンゲージメント
- 当社グループは、幅広い事業展開を通じた地域や関係者に与える影響が大きいため、さまざまなステークホルダーとの緊密な連携が必要と考え、従業員や地域社会、取引先、お客さまなどのステークホルダーとの対話を進めています。
- 次項で、具体的なエンゲージメントの事例を紹介します。
調達・サプライチェーンにおける対応
- 調達・サプライチェーンにおいては、 「人権や労働に関する国際的な基準の順守・尊重」に加えて、「気候変動への対応」「生物多様性の保全」「資源の有効利用」「適切な水利用」「適切な森林資源利用」という環境への配慮を含めた「サステナブル調達方針」を定め、サプライチェーン全体で気候変動対応・自然環境保全の取り組みを推進しています。
サステナブル調達方針
- 「サステナブル調達方針」では、脱炭素の取り組みに関して、エネルギーの効率的な利用と再エネの利用を推進し、事業活動によるGHGの排出が気候変動に与えるインパクトを抑えるよう取り組むことを定めています。これらの取り組みを通じてCDP2023サプライヤー・エンゲージメント・リーダーに選定されました。(4年連続選定)(詳細は「サプライチェーン(環境)」参照)
- また、自然環境保全に関しては、以下の取り組みを掲げています。
- 資材調達・事業活動の際に、周辺環境や生物多様性、生態系への負荷の低減に取り組む
- 資源保存や再生産確保のための措置を講じていない絶滅危惧種の動植物に由来する原材料の不使用
- 事業に使用する資源の有効利用する
- 生物多様性や保護価値の高い森林の保全、森林と共存する地域の文化、伝統、経済を尊重し、伐採国・地域における法令を遵守し、再生材、認証材など持続可能な方法で生産された森林資源を活用する

サプライチェーン・デューディリジェンス
サプライヤーである建設会社には、建設工事の発注時に当社のサステナブル調達方針の順守を条件とし、定期的にデューディリジェンスアンケートを実施し、各社の状況を確認しています。課題がある場合には、建設会社と連携して対応することにより、責任あるサプライチェーンの構築を目指します。2023年度は、定例アンケート調査で97社を評価するとともに、そのうち2社を対象に個別ミーティングを行い、課題点の改善や先進事例の共有等を実施しています。(詳細は「サプライチェーン(社会)」参照)

森林破壊ゼロの取り組み
建設時に使用されるコンクリート型枠用合板パネルは、その多くが南洋材を原材料としており、原産林における環境破壊や先住民からの土地収奪などの可能性が指摘されています。当社グループでは、1次サプライヤーである建設会社と連携した対応により、建物の建設に使用するコンクリート型枠用合板の原料材における持続可能性に配慮した木材(FSCおよびPEFC認証材並びに国産材等)利用率を、2030年度までに100%とする目標を定め、以下のような取り組みを進めました。
住宅の事例
- 2022年度には分譲マンション1棟(ブランズ千代田富士見)の建設工事において型枠合板にPEFC認証材を使用しています。内装材等で使用する認証材以外の木材製品についても、建材メーカーへのヒアリングにより可能な範囲で原産地および合法性を確認しています。また、2024年10月には「コンフォリア芝浦MOKU」が竣工しました。型枠木材はもちろん、サステナブルな素材である木材(国産またはPEFC認証材)をRC構造の中に組み込んだ木造ハイブリッド構造建築としています。
- (株)東急Re・デザインは、「カーボンニュートラル無垢材の会」に参加し、住宅で使用する木材製品の情報を収集しています。
オフィスビル・商業施設の事例
- 広域渋谷圏に位置する COERU SHIBUYA(2022年6月竣工)において、SGEC認証を取得した長野県産のカラマツ材を木質ハイブリッド耐火集成材として使用し、木鋼組子(耐震ブレース)にフィンランド産の合法木材を使用しました。
- 『Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)』のTENOHA棟は、サーキュラーエコノミー活動を行う事業者や行政と連携し、地域と都市をつなぐ活動拠点です。建物はその活動拠点にふさわしく、当社グループの保全対象森林、岡山県西粟倉村の間伐材を構造材として活用しています。




地域社会におけるステークホルダーエンゲージメント
都市でのエンゲージメント
- 東急不動産(株)は広域渋谷圏において、官民で構成される渋谷駅エリアマネジメント協議会の事務局として、防災・防犯対策、屋外広告物地域ルールの策定、情報発信、賑わい創出などまちづくりに関するルールづくりやまちづくり活動を行っています。
- 特に自然災害の面では、渋谷駅周辺の地形の特徴も踏まえ、地下広場で官民関係者による浸水実働訓練を定期的に実施し有事の際のお客様の避難誘導や浸水対策の確認等を行うなど、自然災害時に備えた安心の体制とルールづくりに取り組んでいます。
- また、東急不動産(株)は渋谷区と「渋谷区地域防災に関する包括連携協定」を締結し区の地域防災力向上に取り組んでいます。「災害に強い渋谷のまちづくり」を目指す渋谷区と、「サステナブルで多彩なまちづくり」を目指す東急不動産が、互いの掲げる目標の実現を目的として、官民連携で渋谷のまちの価値向上の取り組みを進めています。
地方でのエンゲージメント
- 東急不動産(株) および東急リゾーツ&ステイ(株)では、東急リゾートタウン蓼科において、長野県茅野市および一般社団法人諏訪広域脱炭素イノベーション協会と、持続可能な循環共生型の脱炭素社会(地域循環共生圏)の創造を通じたカーボンニュートラルなまちづくりに資することを目的とした包括連携協定を締結し、地域とともに取り組みを推進しています。
- また、再生可能エネルギーにおいて地域と連携して地域課題に取り組むべく、一般社団法人再生可能エネルギー地域活性化協会の代表理事を務め、市区町村協議会や県主催の研修会等で講演を行うなどの対話を積極的に行い、地域社会との長期的な関係性構築に努めています。




戦略
戦略
主なリスク・機会
気候・自然関連の重要なリスク・機会(移行リスク)
後述する気候関連のシナリオ分析、自然関連の依存・インパクト分析により検討した主な移行リスクは以下のとおりです。
この表は左右にスクロールできます
分類 | リスク・機会の内容 | 気候 | 自然 | 対応策 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1.5°C | 3°C | 4°C | ||||||
移行 | リスク | 政策 法規制 技術 |
省エネ法の強化・ZEB・ZEH義務化による新築・改修コスト上昇 | ● | ● | — | — |
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炭素価格制度の導入による建築・運営コスト上昇 | ● | ● | — | — | ||||
再エネ電力の政策支援が弱く、市場動向が不透明 | — | — | ● | — |
|
|||
土地改変・資源採取の規制強化による建材の不足、調達コスト増加 土地改変に関する規制強化による開発事業への影響 |
— | — | — | ● |
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|||
緑化率の向上や、エコロジカルネットワーク★形成・在来種植栽など、緑地の質向上を求める規制の導入・強化による対応コストの増加 | — | — | — | ● |
|
|||
プラスチック・フードロスの規制強化による対応コストの増加 | — | — | — | ● |
|
|||
水資源の利用や排水の規制強化による、設備導入などの対応コスト増加 | — | — | — | ● |
|
|||
市場 | テナントによるZEBに対するニーズの増大、賃料・空室率への影響 | ● | ● | — | — |
|
||
住宅購入者によるZEHに対するニーズの増大、商品間の競争の激化 | ● | ● | — | — | ||||
自然へのネガティブインパクトを低減し、ポジティブインパクトを与える物件に対する顧客・テナントのニーズの増大 | — | — | — | ● |
|
|||
持続可能な認証品、サステナブルな代替品の需要が高まることによる調達コスト増加 | — | — | — | ● |
|
|||
評判 | 地域の生態系や、景観、文化的サービスを含む生態系サービスにネガティブインパクト(土地改変、外来種導入、生態系かく乱など)を与える開発・事業運営・調達活動を行った場合の批判 | — | — | — | ● |
|
★ :「用語と解説」参照
気候・自然関連の重要なリスク・機会(移行機会)
後述する気候関連のシナリオ分析、自然関連の依存・インパクト分析により検討した主な機会は以下のとおりです。
この表は左右にスクロールできます
分類 | リスク・機会の内容 | 気候 | 自然 | 対応策 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1.5°C | 3°C | 4°C | ||||||
移行 | 機会 | 市場 製品・ サービス |
テナントによるZEBに対するニーズの増大 | ● | ● | — | — |
|
住宅購入者によるZEHに対するニーズの増大 | ● | ● | — | — | ||||
再エネ電力のニーズの大きな増加 | ● | ● | — | — | ||||
テレワーク普及でテナントオフィス需要が縮小する一方、サテライトオフィス需要増 | — | ● | ● | — |
|
|||
間伐材の利用によるエネルギーコスト削減、新商品の開発 | — | — | — | ● |
|
|||
自然へのネガティブインパクトを低減し、ポジティブインパクトを与える不動産に対する顧客・テナントのニーズの増大 | — | — | — | ● |
|
|||
資本・ 資金調達 |
都市開発での緑地の量・質に対する政策的支援、インセンティブの享受 | — | — | — | ● | |||
自然へのネガティブインパクトを低減し、ポジティブインパクトを与える不動産(緑化、エコロジカルネットワーク形成等)に対する投資の増加 | — | — | — | ● | ||||
評判 | 自然や地域コミュニティへのネガティブインパクトを低減し、ポジティブインパクトを与える事業活動(森林管理、生物多様性保全、開発時の影響の低減、持続可能な資源利用、地域振興への貢献など)による評判・企業価値向上/地域との関係性向上 | — | — | — | ● |
|
||
自然の魅力を引き出し、適切に活用する事業運営によるまち・地域全体の魅力・ブランド価値向上、関係人口の増加 | — | — | — | ● |
気候・自然関連の重要なリスク・機会(物理的リスク)
後述する気候関連のシナリオ分析、自然関連の依存・インパクト分析により検討した主な物理的リスクは以下のとおりです。
この表は左右にスクロールできます
分類 | リスク・機会の内容 | 気候 | 自然 | 対応策 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1.5°C | 3°C | 4°C | ||||||
物理的 | リスク | 急性 慢性 |
自然災害による施設損傷の漸増(1.5°C/3°C)・激増(4°C) | ● | ● | ● | ● |
|
テナントによる施設のBCPへのニーズ増加、賃料・空室率への影響 | ● | ● | ● | — | ||||
住宅購入者によるLCPに対するニーズ増加、地域選別や商品間の競争の激化 | ● | ● | ● | — | ||||
気温上昇による、スキー場の営業期間の短縮、ゴルフ場への暑熱の影響の増大 | ● | ● | ● | ● |
|
|||
気温上昇によるゼネコンの建設コストの増大、必要工期の延長 | — | — | ● | — |
|
|||
気温上昇による空調費の増加 | — | — | ● | — | ||||
他者も含む都市開発に伴うヒートアイランド現象の悪化による空調コスト増加、都市の生活・滞在環境の悪化 | — | — | ● | ● | ||||
気温上昇に対応した、住宅購入者の高性能住宅に対するニーズ増大 | — | — | ● | — | ||||
自然の劣化による、景観悪化など、まちの魅力や資産価値の低下 | — | — | — | ● |
|
|||
河川の汚染、水資源の涵養能力低下等による水資源不足 | — | — | — | ● |
|
|||
他者も含む都市開発や、森林の管理不足など、周辺の自然環境の劣化による、土砂災害・水害などのリスク増加 | — | — | — | ● |
|
|||
森林のCO₂吸収能力の低下による、ネットゼロ移行計画への影響 | — | — | — | ● |
|
|||
観光資源として重要な自然・生態系の劣化による、リゾート地の魅力低下、トレッキングなど自然を活用したアクティビティの魅力の低下 | — | — | — | ● |
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★ :「用語と解説」参照
気候・自然関連の重要なリスク・機会(物理的機会)
後述する気候関連のシナリオ分析により検討した主な機会は以下のとおりです。
この表は左右にスクロールできます
分類 | リスク・機会の内容 | 気候 | 自然 | 対応策 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1.5°C | 3°C | 4°C | ||||||
物理的 | 機会 | 市場 製品・ サービス |
気温上昇による、住宅購入者の高性能住宅に対するニーズの増大 | — | — | ● | — |
|
テナントによる施設のBCPに対するニーズの増加 | ● | ● | ● | — |
|
|||
住宅購入者によるLCPに対するニーズの増加 | ● | ● | ● | — |
気候関連のシナリオ分析
気候関連の戦略
- 気候変動を始めとする地球環境をめぐるさまざまな問題は年々深刻化しています。課題解決の重要性が高まるなか、当社グループは事業において環境貢献度で企業が選ばれる時代と認識しています。
-
長期ビジョン「GROUP VISION 2030」においては、価値創造への取り組みテーマであるマテリアリティに「サステナブルな環境をつくる」を掲げ、環境経営を全社方針のひとつに位置づけました。「環境」における主な機会とリスクは以下のように特定し、KPI目標を定めています。
- グループ一丸となった環境マネジメント体制を機能させながら、TCFD提言に基づいた気候変動への取り組みや、サプライチェーンを通じた環境負荷低減を推進し、定量目標の達成をめざすとともに、地球規模の環境課題をビジネスチャンスと捉え、脱炭素社会の実現をめざし、業界をリードする先進的な事業の創出にチャレンジします。
気候関連の戦略の時間軸
当社グループでは気候変動戦略の策定に当たり、短期・中期・長期を以下の通り区分しています。
- 【短期】会計年度をベースとする1~2年。
- 【中期】中期経営計画を含む3~9年。シナリオ分析では、SBT1.5°C目標を設定した2030年を中期と想定。
- 【長期】長期経営方針を含む10~30年。長期経営方針を含む10~30年。シナリオ分析では、ネットゼロエミッション目標を設定した2050年を長期と想定。
気候関連シナリオ分析の対象事業
当社グループでは気候変動リスク・機会の重要度に応じて順次対象事業を拡大しながら、バリューチェーン上流・下流への影響を含め、シナリオ分析を実施してきました。
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年 | 概要 | 分析シナリオ | 対象事業 | |
---|---|---|---|---|
中期 | 長期 | |||
2018 | 環境省支援事業として シナリオ分析を実施 |
2°C、4°C | 都市 | レジャー |
2020 | 対象分野の拡大 シナリオ分析の見直し |
1.5°C、3°C、4°C | 都市/住宅 レジャー/再エネ |
|
2023 | IEAの最新シナリオ ZE2050の反映 |
1.5°C、(3°C、4°C) |
気候関連のシナリオ分析
シナリオ分析の実施プロセス
- シナリオ分析は、グループサステナビリティ推進部が事務局となり、事業戦略と財務計画に重要な影響を与えるリスクと機会について、該当部門と協議の上で特定しました。次に事務局が外部コンサルタントの知見を活用しながら、影響度を定量的に評価し、社内で共有しました。さらに、想定されるシナリオに対する戦略について、該当部門と協議・策定し、サステナビリティ委員会において承認の上、取締役会に報告を行っています。
気候関連の重要課題
- 気候関連のリスクと機会について、当社グループに影響を与える重要な課題を以下のように認識しています。
- 不動産事業は、開発・運営の段階で大きなGHG排出を伴うことから、当社グループでは気候変動の激化に対応した社会の規制強化、エネルギー・コストの上昇、顧客・投資家の意識変化を移行リスクとして捉えています。さらに、不動産運営における気候変動の物理的リスクの増大も認識しています。
- 特に脱炭素社会への移行に伴う新たな規制や建築・改修コスト上昇を重大な課題として認識しています。
- 一方で、再生可能エネルギーの需要拡大、およびESG金融市場の拡大が期待されており、これらを重要な機会として捉えています。また、顧客の意識変化は、環境に取り組む企業が選ばれる機会の拡大に繋がると捉えています。
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区分 | 類型 | 重要な課題 | 重大な影響 |
---|---|---|---|
移行 リスク |
現在の規制 | 省エネ報告制度、省エネ建築基準 | |
新たな規制 | 1.5GHG排出規制強化、炭素税導入 | 〇 | |
技術 | ZEB・ZEH化の建築・改修コスト増加 | 〇 | |
法的コスト | 東京都キャップ&トレード制度によるクレジット購入 | ||
市場 | 環境価値による価格差別化、エネルギーコスト増加 | 〇 | |
評判 | 顧客・投資家の意識変化 | ||
物理的 リスク |
急性 | 異常気象の激甚化 | |
慢性 | 1.5GHG気温上昇、海面上昇 | ||
機会 | 資源の効率 | 高効率ビルへの移行、リサイクル | |
エネルギー源 | 再エネ利用、国の支援策の活用 | 〇 | |
製品&サービス | 低炭素製品・サービス拡大 | ||
市場 | ESG金融の活用 | 〇 | |
レジリエンス | 運営資産の省エネ改修、BCP対応 |
- シナリオ分析にあたっては、以下のシナリオを参照しています。
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シナリオ | 概要 | 参照シナリオ |
---|---|---|
1.5°C シナリオ |
脱炭素社会に向けて政策・技術・市場などが着実に移行し、21世紀末の地球の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5°Cに抑えるシナリオ。 |
|
3°C シナリオ |
各国が国別目標(NDCs)を順守し、21世紀末の地球の平均気温上昇が産業革命前に比べて約3°Cとなるシナリオ。 |
|
4°C シナリオ |
政策・技術・市場などが現在の傾向延長で拡大するため、21世紀末の地球の平均気温上昇が産業革命前に比べて4°C以上となり、気候変動により自然災害リスクが増大するシナリオ。 |
|
★ :「用語と解説」参照
気候関連のシナリオ分析(1.5°Cシナリオ)
- 中期では都市事業において炭素価格や ZEB 対応コストによる大きな財務影響が生じますが、長期(2050年)ではZEB化が完了し、市場の中で優位性を確保することにより、賃料収入増加が見込めると予想されます。また、再エネ事業も拡大が期待できます。物理的リスクについては、異常気象による自然災害が緩やかに増加しますが、BCP・LCP対応の強化により影響度は低いと予想されます。

- 高い:連結営業収益の10%以上
- やや高い:当該事業ポートフォリオ営業収益の10%以上
- 中程度:当該事業ポートフォリオ営業収益の5~10%
- やや低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2~5%
- 低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2%未満
気候関連のシナリオ分析(3°Cシナリオ)
- 中期では都市事業でのZEB化が比較的穏やかで1.5°C シナリオに比べ財務影響は低くなる一方、長期でもZEB化の影響が続くと予想されます。再エネ事業は一定の拡大が期待できます。
- 物理的リスクについては、1.5°C シナリオに比べて自然災害の激甚化や気温上昇の進捗が速く、レジャー事業における影響度は大きくなりますが、立地の選別やオフシーズンの施設利用などによる競合施設との差別化策により一定の財務影響の抑制を図ることが可能と予想されます。

- 高い:連結営業収益の10%以上
- やや高い:当該事業ポートフォリオ営業収益の10%以上
- 中程度:当該事業ポートフォリオ営業収益の5~10%
- やや低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2~5%
- 低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2%未満
気候関連のシナリオ分析(4°Cシナリオ)
- 中期では気候変動の影響は小幅で、財務影響は低く抑えられますが、長期では自然災害の激甚化・気温上昇の財務影響が大きくなると予想されます。一方、都市事業におけるサテライトオフィス展開、レジャー事業における立地の選別やオフシーズンの施設利用などによる競合施設との差別化策により、一定の財務影響の抑制を図ることが可能と想定されます。また、再エネ事業は市場動向に即した拡大が求められます。

- 高い:連結営業収益の10%以上
- やや高い:当該事業ポートフォリオ営業収益の10%以上
- 中程度:当該事業ポートフォリオ営業収益の5~10%
- やや低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2~5%
- 低い:当該事業ポートフォリオ営業収益の2%未満
気候変動リスク・機会の事業戦略への影響
気候変動リスク・機会に対し、当社グループでは事業戦略において以下のように対応してきました。
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区分 | 影響と対応 |
---|---|
製品・サービス | 気候変動リスク・機会に対し、当社グループでは従来から緩和策としての建物の省エネ性能向上、および適応策としての運営施設のBCP強化に取り組んできました。2021年に策定した長期ビジョンではさらにZEB/ZEHの推進を掲げ、導入率(ZEB/ZEH Orientedまたはそれを超える建物性能を有する東急不動産の分譲マンション・オフィス等の施設件数割合(着工ベース))を2030年度までに100%、2025年度までに約50%とするKPIを設定しています。また東急不動産(株)では再生可能エネルギー事業「ReENE」の事業拡大・推進を目指しています。 |
サプライチェーン バリューチェーン |
上流については、2020年に策定した「サステナブル調達方針」では気候変動問題も課題に掲げ、さらにゼネコンとの協働による建物建設工程の低炭素化の検討を開始しました。下流については、分譲・賃貸住宅のZEH化および再生可能エネルギー電力導入を推進しています。 |
研究開発投資 | 建物管理を業とする(株)東急コミュニティーでは、技術提案力向上に向けた技術研修センター「NOTIA」を建設し、Nearly ZEB認証を取得しました。また、東急不動産(株)新築ではZEBの標準化を目指し、2022年度には、既存のオフィスビルにおけるZEB化を実装するための検証を実施しています。 |
施設の運用 | 都市・レジャー事業などで各種施設を運営する東急不動産(株)では、自社事業の再生可能エネルギー電力の活用を図ることで、2050年に再生可能エネルギー電力利用100%を目指す「RE100★」を2019年に宣言しました。2022年12月には、国内の保有施設全244施設での電力を100%再生可能エネルギーに切り替え完了し、2024年4月には国内事業会社で初めてRE100達成が認定されました。 |
★ :「用語と解説」参照
気候変動リスク・機会の財務計画への影響
気候変動リスク・機会に対し、当社グループでは財務計画において以下のように対応してきました。
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区分 | 影響と対応 |
---|---|
間接費 | 東急不動産(株)は、シナリオ分析の結果に基づき、既存運営施設におけるCO₂排出量について、中期・長期の省エネ改修と運用改善により削減可能な限界値をシミュレーションしたところ、SBT水準のCO₂排出量の削減を実現するためには、速やかに再生可能エネルギー電力の購入に着手し、段階的に削減量を上積みしてゆく必要性を認識しました。そこで自社の再生可能エネルギー事業で発電した電力の購入で賄う検討に着手し、再生可能エネルギー電力の購入に伴う間接費の上昇額を試算しました。その結果を踏まえ、各年度の予算額に対する影響度を評価しながら運営施設の再生可能エネルギー電力導入を早期に進め、2023年度にRE100を達成しました。 |
資本配分 | 東急不動産(株)は、政府の再生可能エネルギー推進策に対応して、2014年からメガソーラー事業に進出し、さらに2018年度から実施しているシナリオ分析の結果を受け、再生可能エネルギー事業拡大を気候変動関連の機会と位置付け、積極的な投資を行っています。太陽光発電、風力発電、バイオマス発電所等を開発・運営しており、その事業規模は国内トップクラスとなっております。 |
負債 | シナリオ分析の結果に基づき、環境関連課題に対する取り組みに対する評価を投資家から得ることを目的として、2019年度には100億円のグリーンボンドを発行しました。2021年度には、国内初となるESG債の長期発行に関する方針「”WE ARE GREEN”ボンドポリシー」を策定し、ESG債比率を、2025年度末に50%以上、2030年度末に70%以上まで引き上げることを目指すこととしています。 |
資産 | 長期ビジョンに基づく事業ポートフォリオマネジメントにおいて、環境影響を評価指標の一つとしました。 |
自然関連のLEAPアプローチに基づく分析
自然関連の「戦略」パートの開示の全体像
TNFDの「戦略」では、自社が特定した自然関連の依存・インパクトやリスク・機会、それらが自社の事業や戦略、財務計画に与える影響、シナリオを踏まえた戦略のレジリエンス、事業活動やバリューチェーン上の優先地域について説明することが推奨されています。本レポートでは、当社グループの事業について以下の内容を検討しています。
なお、自然関連リスク・機会による当社グループ事業や財務への影響については、シナリオ分析の考え方も踏まえながら検討をさらに深めてまいります。

バリューチェーンの自然への依存とインパクトの概観
TNFDの分類を参照し、事業・バリューチェーン段階別に依存・インパクトの内容と定性的な重要性の概観を検討しました。UNEP(国連環境計画)が開発したツールであるENCOREやSBT for Nature★のツールにおける、セクター別レーティングを参考に※1、依存やインパクトの重要性をVery High~Lowの4段階で整理しました。分析結果は以下です※2。
- インパクト依存
-
- 不動産開発・運営時の土地改変・占有などの面で「陸域生態系の利用」が特に高い。
- GHG排出や廃棄物排出、操業段階での水使用、外来種導入なども高い。
- 不動産建設・運営時の水資源、建材などの供給サービスのほか、景観の向上・癒し等の文化的サービスが高い。
- ホテルやレジャー施設では、バリューチェーン上流の食材等の生産段階で、水供給や花粉媒介、気候調整などが特に高い。

- ※1全事業における建設・開発段階、再エネ・レジャー施設以外の物件の運営・操業段階のレーティングは各ツールの「不動産」、再エネ施設の運営段階は「再生可能エネルギー」、レジャー施設の運営は「ホテル・リゾート・クルーズ」、バイオマス燃料や食材等の生産は「森林製品」「農業」のサブインダストリーをベースに、必要に応じ補完・調整して重要性を検討しました。
- ※2セグメントのうち「不動産流通」については、直接の操業段階での依存・インパクトの重要性が高くないこと、間接的な依存・インパクトは他の不動産事業と同様であることから本表では割愛しています。
★ :「用語と解説」参照
当社グループの保有・運営物件における優先地域
バリューチェーンの中でも、当社グループ物件の開発~運営段階での自然のかかわりの重要性が特に高いと考えられるため、当社が保有・運営する主要267拠点(オフィス・商業施設、ホテル、レジャー事業の施設、再エネ施設等/2024年3月)を対象に、所在地を踏まえた優先地域の検討を行いました。TNFDが提示する、生態学的に影響を受けやすい地域等の視点を参照した下表の指標と、当社の依存・インパクト、リスク・機会面での重要性から、優先地域を検討しました。

評価に用いた指標と結果概要
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TNFDの 評価視点 |
参照した指標 | 結果概要 |
---|---|---|
生態系の十全性★ | Biodiversity Intactness Index(生物多様性完全度指数)★の高さによって評価 | 都市部にあるオフィス・商業施設・都市型ホテルの所在地は生態系の十全性が低く、地方のリゾートホテルやレジャー事業の施設、再生可能エネルギー施設の所在地は十全性が中程度~高い。 |
生物多様性の 重要性 |
以下の指標を総合して評価
|
全体のうち114拠点(2024年3月)が保護地域と近接。 都市・地方問わず保全優先度が高い地域が多数ある。 拠点が多数あるため、指標に基づいてスコアリングを行い、当社内での相対的な優先度を検討。(次頁) |
水ストレス | ベースライン水ストレス(Baseline Water Stress)★の高さによって評価 | 水ストレスがかなり高い/高い地域に位置する物件はない。 |
★ :「用語と解説」参照
「生物多様性の重要性」「生態系の十全性」の評価結果をスコアリングすると、右図のような分布となりました。
この評価結果とともに、当社グループ全体の自然への依存・インパクトの検討結果も踏まえ、当社グループにとっての自然関連リスク・機会の観点で、特に優先的に検討すべき地域(優先地域)を表のとおり整理しました。
都市開発事業の「広域渋谷圏」およびホテル・レジャー事業を代表する「東急リゾートタウン蓼科」について、TNFDの提供するアプローチであるLEAPに沿って、自然への依存・インパクト、リスク・機会の詳細検討を行いました。

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優先地域①: 広域渋谷圏 (物件数:39) |
|
広域渋谷圏 渋谷駅を中心とした、半径2.5km圏内の地域であり、当社グループは、駅周辺の回遊性を高める再開発事業のほか、様々な商業施設・オフィスビル等を開発・運営しています。 |
---|---|---|
優先地域②: リゾート施設 など13地域 |
|
東急リゾートタウン蓼科 長野県茅野市の北東部、蓼科高原のほぼ中央に位置する大型複合リゾート。東急ハーヴェストクラブ蓼科をはじめ、ホテル約250室、ゴルフ場、スキー場、別荘約2,300区画、温泉施設、レストラン、店舗、地域共生施設などを備えています。 |
広域渋谷圏・東急リゾートタウン蓼科におけるLEAPアプローチ
優先地域とした地域のうち、「広域渋谷圏」および「東急リゾートタウン蓼科」については、TNFDの提示するLEAPアプローチを踏まえ、自然への依存・インパクトと、それに伴う自然関連リスク・機会を、次ページ以降で、より詳しく検討しました。具体的には以下の内容を検討しています。
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Locate 自然との接点の発見 |
|
---|---|
Evaluate 依存・インパクトの診断 |
|
Assess リスク・機会の評価 |
|
Prepare 対応・報告の準備 |
|
広域渋谷圏(東京都渋谷区)

「東急リゾートタウン蓼科」(長野県茅野市)

広域渋谷圏の都市開発事業での主な依存・インパクト
後述する、広域渋谷圏の自然の状態を踏まえた詳細検討に基づき、広域渋谷圏の都市開発事業における、バリューチェーンを通じた主な依存・インパクトの全体像を下図のとおり特定しました。
自然に対しネガティブ・ポジティブ双方のインパクトを与える可能性がある一方、様々な面で自然に依存もしています。
バリューチェーンにおける自然への依存・インパクト ※太字は特に重要と考えられる依存・インパクト

- ※1調整・維持サービス:気候調整や局所災害の緩和、土壌侵食の抑制、有害生物や病気を生態系内で抑制する効果など、生物多様性により環境を制御・維持するサービス。
- ※2文化的サービス:人間が自然にふれることで得られる、審美的、精神的、心理的な面などで影響を受ける文化的なサービス。
広域渋谷圏における自然の状態と重要性
生態系の十全性
広域渋谷圏は「都市・産業」を中心とした生態系タイプであり、生態系の十全性が高い地域ではありません。
一方、1980年代以降、広域渋谷圏の商業地域全体の緑地面積割合は継続して減少しており(航空写真より算出)、生態系の十全性がさらに低下傾向にあると考えられます。
広域渋谷圏の商業地域全体の緑地面積割合

生物多様性の重要性
東京都市大学、当社グループの(株)石勝エクステリアおよび(株)東急不動産R&Dセンターの3者で、2016~2018年度に、広域渋谷圏の生態系の共同調査・研究2)を実施しました。広域渋谷圏は、明治神宮・代々木公園、新宿御苑・赤坂御用地などの大規模緑地に囲まれ、一方で大規模緑地に囲まれた市街地においては、小規模な緑が広く点在しているなど、都心でも稀有な自然と共存するエリアです。
こうした大規模な緑地には新種・絶滅危惧種や都内では珍しい動植物も生息するとされており、広域渋谷圏は、このような大規模緑地をつなぐエコロジカル(生態系)ネットワークを形成する上で重要な地域と考えられます。

エコロジカルネットワーク
優れた自然条件を有している地域を核として、これらを有機的につなぐこと。採餌・営巣・繁殖などの生息のステージを地域の中で行えることで、個体群の絶滅や遺伝的な多様性の低下を防ぐことに寄与したり、多様な種間の関係性を構築することで地域全体の種の多様性の回復につながるといった効果がある。
生息地の提供によるポジティブインパクト
広域渋谷圏での生育・生息地サービスに関する調査
東京都市大学、(株)東急不動産R&Dセンターおよび(株)石勝エクステリアによる共同研究3)の中で、広域渋谷圏において、屋上庭園を設置して生物多様性を考慮した3つの物件とその周辺地域を対象に、蝶類の調査を行いました。その結果、各物件の屋上緑地でチョウ類の存在が確認されており、特に明治神宮から原宿、表参道につながる生態系ネットワークの一部として当社グループの建物緑化が機能し、生息地の提供により周辺生態系へポジティブインパクトを与えている可能性が明らかになりました。
蝶(チョウ)類が確認されたエリア

「おもはらの森」での生物モニタリングの継続的実施
調査方法
- 鳥類調査(観察調査・定点撮影調査)
- 6月、 9月、1月の計3回、任意に踏査し、目視観察及び鳴き声等で確認された鳥類の種名、個体数、行動等を記録。
- 鳥の利用頻度の高いバードバスを焦点とし、2か所で、感知式カメラおよび感知式ビデオカメラにて飛来時に自動撮影。
- 昆虫類調査(任意観察調査)
- 6月、8月、9月の計3回、任意に踏査し、目視観察及び鳴き声等で確認された昆虫類の種名、個体数の概数等を記録。
東急プラザ表参道『オモカド』では、2012年度から毎年(コロナ過等一部期間除く)、屋上庭園「おもはらの森」におけるモニタリング調査を実施し、生き物の生息・飛来状況の変化を把握しています4)。
広域渋谷圏での生物モニタリングの継続的実施
鳥類については、2012~2019年度において、毎年10~16種、累計22種が確認されています。
例えば、スズメのつがいやシジュウカラなどが巣箱で営巣する様子、ツグミなどの様々な鳥類がバードバスでの飲水、植栽での採餌・探餌、休息などを行う様子が確認されており、様々の鳥類が「おもはらの森」を生息環境として恒常的に利用していることが分かっています。
昆虫類については、2012~2019年度において、毎年40~64種、累計151種が確認されています。
特に、移動能力が高いナミアゲハや、屋上緑地内に餌資源があるミンミンゼミ、アオスジアゲハなど9種が8か年で継続的に確認されています。
モニタリング結果からも、「おもはらの森」を中心とした建物緑化が、広域渋谷圏における生き物の生息地の提供により、生態系にポジティブインパクトを与えている可能性が示唆されます。
今後もモニタリングを継続して自然の状態を把握していく予定です。

経年の鳥類リストと観察写真(確認調査)


建物緑化によるポジティブインパクトの定量評価(手法)
重要性が高い自然へのインパクトのうち、当社グループの物件の土地占有および建物緑化による生態系へのインパクトを、(株)シンク・ネイチャーの協力のもと定量的に分析しました。
- 対象:当社グループの広域渋谷圏のオフィス・商業施設39物件
- 方法:空中写真から定量化した建設前の植栽状況(樹種・本数)と、現在の各物件における植栽状況(樹種・本数)を踏まえ、(株)シンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータに基づき、建設前後での植栽による生物多様性再生効果を定量的に分析。

- 生物多様性再生効果
-
植栽樹種とそれを利用する鳥・蝶の関係に基づき、建設地点の1kmグリッド内に生息する生物が、建設前後でどれだけ増減するかの割合を、3分類群の種数と個体数でそれぞれ算出し、計6つの値の平均を結果に採用。
下図は、(株)シンク・ネイチャーの分析手法の考え方を示したイメージです

出典:(株)シンク・ネイチャー
建物緑化によるポジティブインパクトの定量評価(結果)
広域渋谷圏におけるネイチャーポジティブへの貢献
1980年代から、特に1990~2000年代にかけて、緑地面積割合は建設前後で減少傾向にありますが、当社グループ39物件全体では、商業地域全体の平均を上回って推移していました。さらに、COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)が開催されるなど世界的なターニングポイントとなった2010年以降、生物多様性の損失から反転し、回復傾向(ネイチャーポジティブ)となっています。
生物多様性再生効果については、全39物件のうち15物件で建設前後の再生効果がプラスとなりました。特に、2012年度以降竣工の物件は生物多様性再生効果が高く、広域渋谷圏全体の生物多様性の回復に貢献していると考えています。
都市再開発事業の対象施設等を中心に、当社グループが得意とする地域共生のまちづくりにおいて、緑の量・質の確保と来街者・施設利用者の快適性を調和させた開発・運営を行っていることが、近年の生物多様性再生効果の高さに結びついていると考えられます。

広域渋谷圏を生物多様性の面でも環境先進都市へ
全39物件での植栽による種の捕捉率(広域渋谷圏全体に生息する種のうち、当社グループ物件の緑地で呼び込むことが可能な種の割合)を、(株)シンク・ネイチャーにて分析した結果、鳥類では約6割、蝶類では約9割の種を呼び込むことができる植栽であることが分かりました。特に在来樹木に基づく植栽を行っている物件が、高い捕捉率を示し、緑の質も生物多様性再生効果のアップに寄与しています。
例えば「Shibuya Sakura Stage」では、国や地域、東京都の在来種を含めた多くの樹種を多数植栽することによって、多くの種の鳥や蝶を呼び込める可能性があり、このことが種の捕捉率と再生効果の高さ(7.2%)につながっています。
近年の物件を中心に、在来種植栽などを含む緑化が生物多様性の再生に貢献していることが分かったため、今後も緑地の質に配慮した緑化に取り組むことが重要と考えています。
(株)シンク・ネイチャーが分析した種リスト

Shibuya Sakura Stage(2023年11月竣工)
渋谷駅に隣接する桜丘では、渋谷の新たなランドマークとなる大型複合施設「Shibuya Sakura Stage」の開発を手がけました。
本物件では、憩いの空間となる緑豊かな空間「はぐくみSTAGE」を整備し、ヒートアイランド対策にも寄与する地上、屋上、壁面等を活⽤した立体的な緑化を推進するとともに、太陽光発電等の再生可能エネルギー利⽤や次世代技術導入等による環境負荷低減にも取り組みます。


エコロジカルネットワーク形成によるポジティブインパクト
エコロジカルネットワーク形成に関する評価
生物多様性の取り組みをサポートする環境コンサルティング会社 株式会社地域環境計画の協力のもと、広域渋谷圏でのエコロジカルネットワーク形成の現状と方向性について分析しました。
地形や緑地の現状の分析から、広域渋谷圏は、武蔵野台地に渋谷川および目黒川の谷の低地が入り組んだ地形であり、谷地形や谷部に面した斜面に残存する緑地が多いことが確認されました。
また、当社の物件は、右図の赤○の位置にあり、物件同士が近接・集中している箇所もあります。
今後のエコロジカルネットワークをより充実させるためには、次の3つの場所の着目点が有益と考えられることが分かりました。
- ①緑量が多い場所同士が近接している
- ②谷や谷沿いの斜面など地形的につながりがある
- ③対象物件が近接・集中している
今後もサイトの特性に応じた緑地整備に配慮し、生物モニタリング調査も継続して実施する予定です。
広域渋谷圏における谷地形のつながりとエコロジカルネットワーク形成の方向性

調整・維持サービスへの依存
気候調整・災害緩和など(都市における調整・維持サービス)の重要性
国の生物多様性国家戦略やまちづくりGX戦略、東京都の生物多様性地域戦略において、都市の重要な生態系サービスとして、自然によるヒートアイランド現象の緩和、洪水被害の軽減などの機能が重視されており、依存の観点では、これらの災害緩和・気候調整の生態系サービスが重要と考えられます。国土交通省によると、広域渋谷圏周辺(図の○で囲まれたエリア)は熱の発生源である一方、緑地保全や緑化施策を総合的に講じた場合に気温低下が期待できる地域と考えられます。
また、渋谷区の「みどりの整備方針」では、建物緑化などによって大規模緑地とのつながりを形成することは、都市のヒートアイランド現象の緩和に貢献するクールスポットの創出に寄与するとされており、依存の面だけでなく、こうした調整サービスに対するポジティブインパクトを与える面での重要性も高いと考えられます。

文化的サービスへの依存
自然によるストレス緩和・癒し(文化的サービス)の機能
当社グループでは、オフィスビルで提案する新しい働き方「GREEN WORK STYLE」の一環として、緑(植物や自然)が人に与える影響や効果を科学的に検証しました。例えば、緑のある屋上スペースでの休憩による効果を検証した結果、緑のある休憩後のほうが緑のない屋内と比べてストレス度が6.0ポイント低く、集中度の上昇は高い、ということが分かりました。
この結果からも、広域渋谷圏を含む都市においては、景観の改善、ストレス緩和・癒しといったウェルネスへの効果、働く人のひらめきやコミュニケーション活性化、モチベーションアップなどの生産性向上、そして、オフィス・商業施設などの魅力や資産価値向上といった面で、文化的サービスの重要性が高いと考えられます。
実証実験概要
- 目的:植物のあるスペースで休憩することが、休憩後のストレスや知的生産性に与える影響の検証
- 対象者:14人(男性 30代4人/40代3人、女性 30代4人/40代3人)/日時:2018年6月2日(土)
- 実施場所:日比谷パークフロント(会議室/屋上テラス)
- 収集データ:脳波、作業用タスクの回答数や正答率、主観評価
- 利用機器:感性アナライザ(©電通サイエンスジャム)
- 詳細:作業用タスク実施後、①<植物のあるスペース>または②<植物のないスペース>で休憩。休憩後にもう一度作業用タスクを行い、①と②で感性アナライザから得られたストレス値やタスクの作業効率に与える影響に違いがみられるか検証。




都市開発事業における重要なリスク・機会
当社グループの自然への依存・インパクトに基づき、関連する社会動向・政策の方向性など外部環境の情報も参照したうえで、都市開発事業において想定されるリスク・機会を検討しました。当社グループの事業にとっての重要性を定性的に検討した結果、重要と考えられるリスク・機会は以下のとおりです。
依存している生態系サービスの劣化による景観・快適性の悪化などの物理的リスクや、規制、市場環境の変化による移行リスクなどのリスクが想定される一方で、多くの自然関連機会も生じうることが分かりました。
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分類 | 主な依存・インパクト | 都市開発事業におけるリスク・機会の内容 | ||
---|---|---|---|---|
移行 | リスク | 政策・ 法規制 |
建材・木材などの資源調達 (自然へのインパクト) |
|
オフィス・商業施設等の物件の開発・運営による土地改変・占有 (陸域生態系へのインパクト) |
|
|||
|
||||
市場 |
|
|||
技術 | 水や建材などの利用 (資源利用によるインパクト) |
|
||
評判 | 土地改変・占有、汚染、廃棄物排出、外来種導入等のネガティブインパクト |
|
||
機会 | 市場 |
土地改変・占有、汚染、廃棄物排出などネガティブインパクトの低減 緑地による生息地の提供、エコロジカルネットワーク形成など生態系(および生態系サービス)へのポジティブインパクト |
|
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政策・ 法規制 |
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資本 資金調達 |
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評判 |
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物理 | リスク | 急性 ・慢性 |
ヒートアイランド現象の緩和 (調整・維持サービスへの依存) |
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レクリエーション、視覚的アメニティ (文化的サービスへの依存) |
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東急リゾートタウン蓼科について
「東急リゾートタウン蓼科」は、長野県茅野市の北東部、蓼科高原のほぼ中央に位置し、標高1,100mから1,800mに立地する、総敷地面積約660ha(東京ドーム約140個分)の大型複合リゾートです。会員制リゾートホテルである東急ハーヴェストクラブ蓼科をはじめ、ホテル約250室、ゴルフ場(18ホール)、スキー場、別荘(戸建て、保養所、ヴィラ)約2,300区画、温泉施設、レストラン、店舗などを備えています。1974年に着工し、1978年には蓼科東急ゴルフコース開業、別荘地第1次販売を開始し、以後スキー場、テニスコート、ホテル等を開業、多彩なアクティビティや癒し、ワーケーションも含め、お客様が快適に豊かな自然を楽しむことができる、様々な施設・サービスを展開しています。
タウン内からは八ヶ岳連峰を望み、7月から8月でも最低気温は10°Cを下回ることもあるほど夏は過ごしやすく、湿度が低い爽やかな気候により、避暑地として優れた自然環境を有しています。

東急リゾートタウン蓼科での事業での主な依存・インパクト
「東急リゾートタウン蓼科」の事業は、下図のように、様々な面で自然や生態系サービスに依存しており、事業を営む上で、自然や自然のもたらす恵みが特に重要であると考えられます。また、ネガティブ・ポジティブ双方の自然へのインパクトも与えています。

後述する、東急リゾートタウン蓼科の自然の状態を踏まえた検討に基づき、事業・バリューチェーンを通じた主な依存・インパクトを下図のとおり特定しました。
自然に対しネガティブ・ポジティブ双方のインパクトを与える可能性がある一方、様々な面で自然に依存もしています。
バリューチェーンにおける自然への依存・インパクト ※太字は特に重要と考えられる依存・インパクト

東急リゾートタウン蓼科の自然の特徴
「東急リゾートタウン蓼科」は、ホテル・ゴルフ場・スキー場・別荘などを備えた大規模な複合リゾートであり、敷地には約588ヘクタールの広大な森林を有しています。そのうち約3割以上と多くを占めるのが戦後に木材利用のために植林されたカラマツ林であり、そのほかミズナラなどのナラ類も多く見られるのが特徴です。

「東急リゾートタウン蓼科」の森林の構成

構成樹種 | 面積 | ||
---|---|---|---|
ヘクタール | 割合 | ||
針葉樹 | カラマツ | 207 | 35.1% |
アカマツ | 6 | 1.1% | |
サワラ | 9 | 1.6% | |
その他針葉樹 | 2 | 0.3% | |
広葉樹 | ナラ類 | 47 | 8.0% |
その他広葉樹 | 317 | 53.8% |
※森林の面積、構成は当社が保有、または長野県が公開している森林簿から集計。
観光資源としての自然への依存に関する評価(手法)
豊かな自然に囲まれた「東急リゾートタウン蓼科」は、観光資源として様々な自然資源に依存しています。
そこで(株)シンク・ネイチャーと連携し、生物種の分析を軸に、「東急リゾートタウン蓼科」の観光資源としての自然への依存について、詳細分析しました。
- 観光資源としての特徴:
- タウン内の森林に多く存在しているカラマツの黄金色の紅葉を表す「カラマツゴールド」をはじめとして、秋の紅葉や春~初夏の新緑を楽しむお客様が多い。
- 八ヶ岳連峰のふもとにある立地を活かし、登山やトレッキングを目的とした来訪が年間を通して多い。
- 特色ある植生
- カラマツ林:地域で特色のある植生であり、「カラマツゴールド」として紅葉の美しさも評判が高い。
- ミズナラ群落:地域でよく見られる植生であり、紅葉に優れた種を多く含んでいる。
- コケモモ-ハイマツ群集:地域で多い高山植生であり、登山利用のニーズにマッチする。
- 依存に関する定量評価
- これらの特色のある植生が、全国と比較しても豊富なのかを定量的に把握するため、(株)シンク・ネイチャーの生物分布ビッグデータに基づき、上記植生を中心に、「東急リゾートタウン蓼科」内および周辺で特徴的(=豊富に生息している)な生物種を分析しました。具体的には右記の「リフト値」を算定しました。
出典:(株)シンク・ネイチャー
- リフト値による特徴的な生物種の把握
- ある生物種について、分析対象の地域(「東急リゾートタウン蓼科」や茅野市)での生息割合が、全国での生息割合の何倍か、を表したもの。
- 1よりも大きいと、日本全国と比較して生息に適した地域が多いことを表す。
和名 | 東急リゾート タウン蓼科 |
茅野市 |
---|---|---|
カラマツ | 14.2 | 11.2 |
ノリウツギ | 4.1 | 4.0 |
ヤマブドウ | 3.7 | 3.0 |
アキノキリンソウ | 3.4 | 3.2 |
ミズナラ | 1.5 | 0.8 |
ウリハダカエデ | 4.2 | 3.8 |
ハイマツ | 10.2 | 9.7 |
コケモモ | 9.8 | 10.1 |
ナナカマド | 12.6 | 11.8 |
ダケカンバ | 5.7 | 4.6 |
観光資源としての自然への依存に関する評価(結果)
分析の結果(カラマツ林)
「東急リゾートタウン蓼科」は全国的にみても、カラマツ分布の中心部とも呼べるほどカラマツが豊富であることが分かりました。カラマツは日本固有種で、針葉樹で唯一の落葉樹であるため、春は新緑、秋は紅葉を楽しむことができます。また、カラマツ林で特徴的な植物として、ノリウツギやヤマブドウなど山裾に色合いをもたらす植物、美しい花を咲かせるアキノキリンソウなどが豊富であることも分かりました。これらの豊かな植生と、それによる美しい景観が、「東急リゾートタウン蓼科」の観光地としての魅力を高め、来訪客等の交流人口や関係人口の維持・増加などの側面で、事業を支えているといえます。

出典:(株)シンク・ネイチャー
ミズナラ、ハイマツについても、以下の特徴が分かり、これらの豊かな植生とそれによる美しい景観が、「東急リゾートタウン蓼科」の観光地としての魅力を高め、来訪客等の交流人口や関係人口の維持・増加などの側面で、事業を支えているといえます。
ミズナラ
ミズナラについては、茅野市では必ずしも卓越して多くない一方、「東急リゾートタウン蓼科」では卓越して生息が多いことが分かりました。ミズナラ群落では、ウリハダカエデなどのカエデ科の植物やナラ類など、紅葉に富んだ植物の生息が豊富であることも分かりました。

(出典:シンク・ネイチャー)


ハイマツ
八ヶ岳連峰の稜線と同期するように「東急リゾートタウン蓼科」の東方に生息適地適性度の高い地域が分布していること、茅野市では高山植生であるハイマツの生息が全国的に見ても多いことが分かりました。また、コケモモ-ハイマツ群集に関連する植生として、コケモモのほか、ダケカンバなど紅葉性にも優れた植物の生息が豊富であることが分かりました。これらの高山植生は、登山客にとっての魅力の一つとなっていると考えられます。

(©Σ64/Licensed under CC BY-SA 3.0)

(出典:地域環境計画)

(©Agnes Monkelbaan/Licensed under CC BY-SA 4.0)

(©Sten Porse/Licensed under CC BY-SA 3.0)
土地利用によるインパクトの定量評価(手法)
事業によるインパクトのうち、生態系サービスや森林生態系、景観の変化などに影響を及ぼす可能性のある重要なインパクトとして、施設の開発や運営による土地改変・占有によるインパクトを詳細に評価しました。
具体的には、当社の開発開始以降の森林面積の変化を、(株)シンク・ネイチャーの協力のもと、定量的に分析しました。
- 対象:東急リゾートタウン蓼科
- 方法:1973年・1975年の空中写真/1985年以降の精度の高い衛星画像を用いて、AIなどでの機械学習※も用いながら森林/非森林の区別を推定し、森林面積の変化傾向を定量的に分析しました。

機械学習:データ解析の方法の一つで、大量のデータからコンピューターが自らルールを学習し、その結果をもとに予測・判断を実施するもの。
土地利用によるインパクトの定量評価(結果)
経年における森林の変化は下図の通りです。用地取得前後の1975年頃は、敷地北部を中心に非森林地域が多い状態でした。森林の状態は、これら地域の森林の回復と、施設・別荘などの開発により変動していることが分かりました。

出典:(株)シンク・ネイチャー
森林の状態を分析した結果、東急リゾートタウン蓼科における森林面積割合の変化は以下となりました。森林面積はゴルフ場や別荘・ヴィラの建設等による落ち込みを挟みつつも、全体の推移としては回復傾向にあり、現在は最も回復した水準となっていることが分かりました。森林を維持・回復をしながらの事業運営により、当社のリゾート開発・運営がネイチャーポジティブに貢献していると評価されています。
森林面積割合の変化(空中写真・衛生画像から評価)

出典:(株)シンク・ネイチャー
森林管理によるポジティブインパクトの定量評価(手法)
当社グループでは、茅野市の森林整備計画に基づき2018年に東急リゾートタウン蓼科における森林経営計画★を策定し、間伐・植林による森林管理に取り組んでいます。一方で、森林を構成する樹木の樹齢が高齢化していることから、間伐・植林に加え、今後は老齢化したカラマツ林の一部皆伐★と植林を含む森林管理を検討しています。そこで、今後の森林管理のあり方が生物多様性にもたらしうるインパクトを定量的に評価しました。
具体的には、(株)シンク・ネイチャーの協力のもと、森林の植生状況や管理状況を踏まえ、森林の生物多様性の状態を表す指標の一つである「生物種数」を対象に、過去からの推移と、森林管理のあり方が生物種数に与える影響を定量的に分析しました。
森林のうち、カラマツ林について、毎年2ヘクタールずつ老齢林を皆伐し植林する森林保全活動を行っていくと仮定したパターンと、間伐や皆伐を行わずに自然遷移に任せたパターンを比較分析しました。
★ :「用語と解説」参照
定量分析の概要
カラマツ林を対象に、(株)シンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータに基づき、以下の2パターンの管理方法により、生物種数が将来どのように変化するかを分析しました。
この表は左右にスクロールできます
パターン | 将来の管理想定 | 何が分かるか |
---|---|---|
1. 森林管理を行う場合: 老齢林の一部を皆伐・植林し、広葉樹林が混ざり合った森林とする |
毎年2ヘクタールずつ老齢林(80年生以上)を皆伐し、広葉樹を植林して混ざり合った森林に少しずつ遷移させる | 小規模皆伐および植林を長期的に行った場合の生物多様性への影響 |
2. 森林管理を行わない場合: 自然遷移に任せる(放置) |
森林管理を行わず(間伐・皆伐をしない)、自然遷移に任せる | 人の手を加えずに森林をそのまま残した場合の生物多様性への影響 |
- ※伐採:不要な樹木を切り倒すこと。
- ※間伐:育てようとする樹木どうしの競争を軽減するため、樹木の混雑度に応じて一部の樹木を伐採すること。
- ※皆伐:森林を構成する林木の一定のまとまりを一度に全部伐採すること。
森林管理によるポジティブインパクトの定量評価(結果)
森林管理による生物多様性インパクトの評価
通常、経年すると森林樹木の高齢化に伴い、森林の生物種数は減少します。分析の結果、当社は開発開始以来、森林伐採を抑えた開発とカラマツ林の植栽・保全管理によって、紅葉性に富み景観に優れた森づくりを行っている一方、平均樹齢は80年以上と、森林の高齢化が進み、生物種数が減少するフェーズにあることが分かりました(下図、2023年まで)。
一方で下図のとおり、カラマツ林においては、老齢林の一部を皆伐・植林し、広葉樹林が混ざり合った森林に誘導していく管理方法(パターン1)は、森林管理を行わず自然遷移に任せる方法(パターン2)と比べて、生物種数の低下度合いを抑制できることが分かりました(下図、2023年以降)。こうした結果も参考に、今後も間伐の継続や、一部の皆伐・植林を含め、適切な森林管理により、生物多様性の保全に努めてまいります。
生物種数の変化(カラマツ林において)
出典:(株)シンク・ネイチャー

平均生物種数:カラマツ林を30m四方のグリッド(枠)で分割し、各グリッド内に含まれる生物種数をデータ分析したのち、全グリッドで単純平均を算出したもの。
森林の多面的機能へのポジティブインパクト(炭素吸収機能)
依存する自然の機能の一つである「森林の炭素吸収機能」について、「東急リゾートタウン蓼科」の森林によるCO₂吸収量を算定しました。
- 対象:「東急リゾートタウン蓼科」の森林(森林面積 約588ヘクタール)
- 方法:林野庁の「二酸化炭素の吸収・固定量『見える化』計算シート」を利用
- データの出典:当社が保有、または長野県が公開している森林簿および森林計画図
森林の構成

見える化シートの概要
この表は左右にスクロールできます
項目 | 詳細 |
---|---|
作成・公開 | 林野庁 |
特徴 |
|
計算式 | 1haあたりの年間CO₂吸収量 =①1haあたりの年間幹成長量×②拡大係数×(1+③地下部比率)×④容積密度×⑤炭素含有率×⑥44/12 |
係数の定義 |
|
森林によるCO₂吸収量(単年)
分析の結果、「東急リゾートタウン蓼科」の森林全体では、1年あたり892tのCO₂を吸収していることが分かりました。これは一般家庭約240世帯分※の年間世帯排出量に相当します。
CO₂吸収量 | 樹種別の吸収量 | 合計 | |
---|---|---|---|
カラマツ | その他樹種 | ||
年間推定値 (t-CO₂/年) |
340 | 552 | 892 |
1ヘクタールあたりの年間推定値 (t-CO₂/ha/年) |
1.6 | 1.4 | 1.5 |
CO₂吸収量(区域ごと)

「日本国温室効果ガスインベントリ(2021年度)」データの世帯あたりCO₂排出量から算定。
森林によるCO₂吸収量(累計)
過去50年間で、森林の面積や構成樹種は変化せず、樹齢は経年変化しているという仮定のもと、過去の森林の状態を推定し、開発(1974年頃)以来、2023年までの累積のCO₂吸収量を計算しました。
計算の結果、 「東急リゾートタウン蓼科」の森林全体では、累積で約7.4万tのCO₂を吸収していることが分かりました。単年平均すると約1,480tのCO₂となり、約400世帯分の年間排出量に相当します。
累積CO₂吸収量 | 樹種別の吸収量 | 累計 | |
---|---|---|---|
カラマツ | その他樹種 | ||
1974~2023年の累積推定値 (t-CO₂) |
3.1万 | 4.3万 | 7.4万 |
CO₂吸収量(累計)

森林の多面的機能へのポジティブインパクト(概要)
東急リゾートタウン蓼科では必要な水を、川や地下水から取水していますが、この水は森林によって守られています。森林は、炭素吸収はもちろん、水源涵養(かんよう)、土壌流出抑制などの多面的機能を持っており、50年以上にわたって東急リゾートタウン蓼科の持続的な発展を支えてきました。東急リゾートタウン蓼科は、利用した水の浄化はもちろん、間伐など森林の適切な管理を行い育成することによって森や水資源を保全しています。このような森林との依存・インパクトの関係の中で、東急リゾートタウン蓼科は大切な水循環の一端を担っています。

森林の多面的機能へのポジティブインパクト(水源涵養機能)
東急リゾートタウン蓼科は、独自の上水場を完備し、タウン内の複数の天然の水源から取水して、タウン全体の水道水をまかなっている自給型のリゾート施設です。持続可能な水源の確保と水道供給のためには、タウンの森林の水源涵養機能が重要な役割を担っています。
タウン内の森林を対象に、森林の水源涵養機能とタウン全体の取水量との関係性について、総合的な流域水循環解析を行い水問題の科学的ソリューションを提供する企業である、(株)地圏環境テクノロジーの協力のもと、水循環に関するシミュレータ「GETFLOWS」を用いて、定量的に評価しました。

- タウン内の湧水や表流水3ヶ所より取水し、ろ過、滅菌した後、1日約800t~900t、トップシーズンには2,200tもの水を供給。
- 年3回、川の上流清掃と、ろ過池の清掃を行い、6ヶ所ある配水池の点検整備を毎日実施。
※水源涵養
森林の土壌により、降水が地中に染み込み、保持されること。森林に降った雨は、一度森林や土壌を経由して、土壌の隙間に蓄えられ、ゆっくり時間をかけて河川に流出するため、「洪水の緩和」や「水資源の貯留」に寄与する。また地中を通った水は濾過され「水質浄化」も期待される。
定量分析
- (株)地圏環境テクノロジーにて、東急リゾートタウン蓼科を含む周辺地域の気象条件(降水量など)や地形、土地利用、地質、森林条件(樹木の樹種や樹高、立木密度など)を反映した「水循環モデル」を構築。
- 構築したシミュレーションモデルにより、対象地域における地表水・地下水の流れる経路や、水の涵養量(地面に染み込む水量で、降水量や地質の状態、樹種ごとの森林の蒸発散量を考慮して算出)を定量分析。

分析による結果
- 対象地域の水源涵養量は、地形の違いや降水量、樹種などの森林条件(蒸発散量)の違いで、水源涵養量の分布差があります。
- 分析の結果、タウン内の森林全体での水源涵養量は年間532万m³と算出されました。東急リゾートタウン蓼科での年間水使用量は約16万m³(2023年度実績)であり、水源涵養量全体の3.1%にとどまることが分かり、タウン内の水使用量の全てが、タウン内の水源涵養量によりまかなうことができていることを確認でき、持続可能性が高いと評価されました。
- 森林が減少した場合、降った雨は地表を一気に流れてしまうため、水資源の涵養機能(貯留力)が低下する可能性があります。また間伐することにより土壌を適切に保たれることで雨水の浸透を促します。タウンの森林を適切に管理しながら守りつつ、事業活動を行っていることにより、タウン内での涵養と水使用が持続可能な状態となっているといえます。水源涵養機能は、洪水緩和や地下水資源の貯留、水質浄化などの多面的機能にも寄与し、リスク低減につながっていると考えられます。


出典)地圏環境テクノロジー
森林の多面的機能へのポジティブインパクト(土壌流出抑制機能)
森林の土壌は、水源涵養や森林生態系の保全に重要な役割を担っているため、土壌流出は水源涵養機能の低下、水質の悪化、生態系の破壊・損失など、自然に対しネガティブな影響を及ぼします。
東急リゾートタウン蓼科の森林により、土壌流出がどの程度抑制されているのかを定量的に評価しました。
方法
土壌流出量を予測する算定方法として一般的に使用されているUSLE(Universal Soil Loss Equation)式を用いて、森林がある場合と荒地となっている場合で、土壌流出抑制量にどの程度の差があるかを分析しました。
USLE式
- 米国農務省を中心に開発され、同国の農地保全基準として採用。日本でも「土地改良計画指針」で解説されている。
- 降雨の特性、土壌の特性(土壌の透水性の高さなど、流出しやすさに関する係数)、斜面長・傾斜、表層の植生から年間の平均的な土壌流出量を評価するもの。
分析による結果
- 分析の結果、森林が維持される場合には、東急リゾートタウン蓼科における土壌流出量は年間205tである一方、仮に森林が荒廃し荒地となった場合には、年間1,250tまで土壌流出量が増加することが分かりました。森林などの環境を適切に維持しながら事業活動を行っていることにより、エリアからの土壌流出量を荒地の場合と比較して▲83.6%抑制できていることが分かりました。
- 健全に樹木が育つことにより、根が張った土壌が適切に保たれ、蒸発散によって降雨量の調整が行われます。タウンの森林を維持していくことにより、土壌の流出が抑制されるため、土壌流出による水源涵養機能の低下、それに伴う災害、水質の悪化、生態系の破壊などのリスクを防ぐことができると考えられます。

ホテル・レジャー事業における重要なリスク・機会(移行リスク)
「東急リゾートタウン蓼科」での検討を踏まえ、ホテル・レジャー事業において想定されるリスク・機会を検討しました。
当社グループの事業にとっての重要性を定性的に検討した結果、重要と考えられるリスク・機会は以下のとおりです。
依存している生態系サービスの劣化による、リゾート・観光地としての魅力の低下などの物理的リスクや、規制、市場環境の変化による移行リスクなどのリスクが想定される一方で、多くの自然関連機会も生じうることが分かりました。
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分類 | 主な依存・インパクト | リスクの内容 | ||
---|---|---|---|---|
移行 | リスク | 政策・ 法規制 |
その他資源の利用、 廃棄物 |
|
水資源の利用 |
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水質汚染 |
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|||
陸域生態系の利用、 その他資源の利用 |
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技術 | CO₂排出、水資源利用 |
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市場 | 資源利用 |
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||
評判 | 陸域生態系の利用、 改変、水資源の利用 |
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||
外来種導入、 生態系かく乱 |
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ホテル・レジャー事業における重要なリスク・機会(移行機会)
この表は左右にスクロールできます
機会の分類 | 主な依存・インパクト | 機会の内容 | ||
---|---|---|---|---|
移行 | 機会 | 資源効率 |
土地改変・占有、汚染、資源利用、廃棄物排出などネガティブインパクトの低減 森林の適切な管理や生物モニタリング、生物種の保護など、生態系(および生態系サービス)へのポジティブインパクト |
|
資本 |
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商品・ サービス |
|
|||
評判 |
|
|||
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自然の保護・回復 ・再生 |
|
ホテル・レジャー事業における重要なリスク・機会(物理リスク)
この表は左右にスクロールできます
分類 | 主な依存・インパクト | リスクの内容 | ||
---|---|---|---|---|
物理 | リスク | 急性 ・慢性 |
水資源への依存 |
|
水資源の供給、花粉媒介や気候調整への依存 |
|
|||
土壌・堆積物保持、暴風雨緩和、気候調整への依存 |
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気候調整、生息地の個体数や生息環境の維持、文化的サービスへの依存 |
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上記以外の事業における重要なリスク・機会
都市開発事業やホテル・レジャー事業以外の事業分野についても、依存・インパクトの概観を踏まえ、下表のような自然関連リスク・機会が想定されます。様々なリスクの一方、事業機会獲得の可能性も想定されます。
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分類 | 事業におけるリスク・機会の内容 | ||
---|---|---|---|
移行 | リスク | 政策・法 |
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評判 |
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||
機会 | 自然の 保護・回復・再生 |
|
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物理 | リスク | 急性・慢性 |
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リスク・インパクト管理
リスク・インパクト管理
気候・自然関連課題の特定・評価プロセス
気候関連リスク・機会の特定・評価プロセス
- 長期ビジョンにおけるテーマ(マテリアリティ)の1つに「サステナブルな環境をつくる」を掲げ、環境経営を全社方針に位置づけ、バリューチェーン全体における各マテリアリティの事業機会とリスクを整理しました。
社会課題の把握と
統合・集約ステークホルダーの
期待の確認優先順位の高い
経営課題の抽出マテリアリティと
機会・リスクの特定 - さらに、不動産事業を中核とする当社グループに気候変動とその対策が影響を与える重要な課題を認識し(気候関連のシナリオ分析(3°Cシナリオ)参照)、中長期のリスクと機会を特定・評価するために、当社グループの4事業(都市・レジャー・住宅・再エネ)を対象にシナリオ分析を実施し、事業戦略に反映しています。
- 分析は、国際エネルギー機関(IEA)及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオを参考に、1.5°C/3°C/4°C の3ケースで行いました。
自然関連の依存・インパクト・リスク・機会の特定・評価プロセス
- 依存・インパクトは、全社の事業・バリューチェーン別の依存・インパクトの概観・定性的な重要性を整理したうえで広域渋谷圏における都市開発事業および「東急リゾートタウン蓼科」を含むホテル・レジャー事業において、地域固有の情報に基づく定性・定量的な依存・インパクトの評価を行いました。
- 依存・インパクトおよび、生物多様性国家戦略などの外部環境の情報を踏まえ、広域渋谷圏を中心とした都市開発事業「東急リゾートタウン蓼科」を含むホテル・レジャー事業における自然関連リスク・機会を特定しました。このリスク・機会は、当社グループにとって特に重要性が高いと考えられるものを開示しています。また、今後はシナリオ分析やシナリオを踏まえたリスク・機会の重要性評価を検討していきます。
依存・インパクトの分析
- 全事業・バリューチェーンにおける依存・インパクトの概観の把握
- 「広域渋谷圏」、「東急リゾートタウン蓼科」における依存・インパクトの詳細な評価
外部環境に関する情報の収集
- 政策の方向性などの外部環境の情報収集
リスク・機会の特定
- 依存・インパクトを踏まえたリスク・機会の特定
- 定性的に重要性が高い項目の特定
気候・自然関連課題の管理プロセス
依存・インパクト・リスク・機会の管理プロセス
- 代表取締役社長直轄の「サステナビリティ委員会」を設置し、気候関連課題および自然関連課題などの重要課題について計画立案・実績確認を行い、取締役会にその結果を報告しています。
- 「サステナビリティ委員会」の事務局であるグループサステナビリティ推進部や各事業部門は、気候関連課題および自然・生物多様性関連課題についての目標設定、実績の管理、情報共有を行うことで、関連法規に基づき適正な報告を行うとともに、事業活動を通じてGHG排出量や廃棄物排出量、自然や生物多様性へのネガティブインパクトの低減、ポジティブインパクトの拡大に取り組んでいます。
- 2020年1月に「サステナブル調達方針」を策定し、バリューチェーンにおいても、上流・下流のステークホルダーとの協働により、気候変動や、自然関連のネガティブインパクトの低減に取り組んでいます。
気候・自然関連リスクの全社的リスク管理への統合
- 当社は、経営に重大な影響を及ぼすリスクを特に《重要リスク》として、管理を行っています。
重要リスク
- ①投資リスク
- ②財務資本リスク
- ③人事労務リスク
- ④法務コンプライアンスリスク
- ⑤IT戦略リスク・デジタル戦略リスク
- ⑥情報セキュリティリスク
- ⑦危機管理対応
- ⑧気候変動リスク
- 自然・生物多様性関連課題を含むESGリスクについても、一体的に管理しています。
ESGリスクの例
気候変動・生物多様性保全・環境汚染・廃棄物の削減と適切な処理・資源利用・水資源保全・人権保護・児童労働防止・地域や社会への貢献・従業員の健康と安全・従業員の人権・汚職、贈収賄・コーポレートガバナンス等
測定指標・ターゲット
測定指標・ターゲット
気候変動に関するターゲット
コミットメント・目標
- 当社グループは、2050年にネットゼロエミッションを実現するGHG排出量削減の長期目標を設定し(SBTネットゼロ認定を取得)、事業を通じて脱炭素社会に向けた活動を推進しています。
- また、上記に向けたマイルストーンとして、2019年度を基準とした2030年度におけるScope1・2(自社)及びScope3★(サプライチェーン(削減目標対象:カテゴリ1・2・11))のCO₂排出量を46.2%削減することを目標として設定し(SBT(1.5°C水準)認定取得) 、CO₂排出量の実績を管理しています。
- 更に、中期経営計画において2023年度におけるScope1・2 のCO₂排出量を50%削減することを目標としていましたが、 2022年度に50.7%削減し目標を前倒しで達成しました。
- なお、排出量実績値については、環境認証機関による第三者保証を受けています。
目標に対する排出量実績

★ :「用語と解説」参照
気候・自然関連の測定指標・ターゲット
そのほか、気候・自然関連で、当社グループでは以下の測定指標・ターゲットを設定しています。
この表は左右にスクロールできます
指標 | 2030年度 目標 |
2025年度 目標 |
2021年度 実績 |
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
財務指標 | ROE | 10%以上 | 9% | 5.7% | 7.3% | 9.6% | |||
ROA | 5%以上 | 4% | 3.2% | 4.1% | 4.2% | ||||
D/Eレシオ | 2.0倍以下 | 2.2倍以下 | 2.3倍 | 2.2倍 | 2.1倍 | ||||
営業利益 | 1,500億円以上 | 1,200億円 | 838億円 | 1,104億円 | 1,202億円 | ||||
当期純利益 | 750億円以上 | 650億円 | 351億円 | 482億円 | 685億円 | ||||
環境指標 | 全般 | 環境認証取得※1 | 100% | 70% | 35% | 48.7% | 65.0% | ||
事業を通じた環境への取り組み (累計) |
100件以上 | 50件以上 | 22件 | 36件 | 70件 | ||||
気候変動 | RE100達成(東急不動産(株)) | 達成 | 達成 | — | 切替完了 | 達成 | |||
再エネ電力利用比率 | 60%以上 | 65% | 4.0% | 52.9% | 84.1% | ||||
CO₂排出量
目標は2019年度比、総量
|
Scope1,2 (千t-CO₂) |
152.4 (▲46.2%) |
ー 2023年(▲50%) |
257.0 (▲9.3%) |
139.8 (▲50.7%) |
84.1 (▲70.3%) |
|||
Scope3 | — | — | 1,801.7 | 1,739.0 | 1,645.3 | ||||
うちカテゴリ 1・2・11 |
964.4 (▲46.2%) |
— | 1,700.9 (▲5.1%) |
1,626.3 (▲9.3%) |
1,578.3 (▲11.9%) |
||||
自然 | 森林保全に関する目標 | 3,000ha | 2,400ha | 2,031ha | 2,086ha | 2,145ha | |||
土地利用に関する目標:建物緑化(屋上・壁面など※2) | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
- ※1非住宅の大型保有物件(延長面積10,000m²以上)を対象。共同事業など一部除く
- ※2東急不動産(株)のオフィスビル・商業施設の新築大型物件
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指標 | 2030年度 目標 |
2025年度 目標 |
2021年度 実績 |
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
環境指標 | — | 水使用量(m³) | — | — | 4,866,901 | 5,101,092 | 5,386,895 | |
原単位(m³/m²) (対前年度比) |
前年度比低減 | 前年度比低減 | 1.4 (+7.3%) |
1.7 (+19.0%) |
1.8 (+9.1%) |
|||
汚染/ 汚染除去 |
廃水排出
(TNFDの中核指標C2.1)
|
総排水量(m³) | — | — | 5,004,959 | 5,195,749 | 5,486,100 | |
地表水への総排出量(m³) | — | — | 929,748 | 1,012,969 | 1,108,319 | |||
下水道への総排出量(m³) | — | — | 4,075,211 | 4,182,780 | 4,377,781 | |||
対象施設延床面積(m³) | — | — | 3,444,317 | 3,034,240 | 2,936,936 | |||
廃棄物の 発生・処理 (C2.2)
|
総排出量(t) | — | — | 27,827 | 21,181 | 21,120 | ||
非リサイクル廃棄物排出量(t) | — | — | 10,947 | 13,713 | 12,553 | |||
有害廃棄物排出量(t) | — | — | 86 | 1,040 | 4 | |||
リサイクル廃棄物排出量(t) | — | — | 16,880 | 7,467 | 8,535 | |||
対象施設延床面積(m²) | — | — | 3,289,418 | 2,853,448 | 2,642,814 | |||
原単位(kg/m²) (対2019年度比) |
8.5 (2019年度▲11%) |
— | 8.5 (▲11.7%) |
7.4 (▲22.5%) |
8.0 (▲16.6%) |
|||
GHG以外の大気汚染物質* (C2.4) |
NOx(t) | — | — | 0.229 | 0.135 | 0.135 | ||
SOx(t) | — | — | — | 0.007 | 0.007 | |||
資源使用 ・補充 |
高リスク天然一次産品の調達 (C3.1) |
木材調達量(m³) | — | — | — | 19,892 | 7,757 | |
サステナブル調達(型枠木材) | 100% | 30% | 0% | 2.8% | 9.7% |
*ノースポートモール(横浜市)における年間排出量
- ※より詳細なデータはESGデータをご参照ください。
脱炭素社会への移行計画
脱炭素社会への移行計画
フレームワークに沿った移行計画の策定
- 当社グループは、すべての事業を通じた環境負荷軽減を目指し、「脱炭素社会」の目標として、2050年ネットゼロエミッションを掲げています。また、国際的なキャンペーンである「Business Ambition for 1.5°C」「Race To Zero★」にも参加し、取り組みを進めています。 2024年度には、SBTネットゼロ認定を取得しました。
- マイルストーンとして、中期経営計画2025の最終年度に当たる2025年度には、自社のカーボンマイナス達成を目指しています。また、2019年度比で2023年度に自社のScope1・2のCO₂排出量を50%、2030年度にはScope3※1のCO₂排出量を46.2%削減することを目標として設定しました。(SBT認定取得済み)。
★ :「用語と解説」参照

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移行計画の要素(再掲) | 開示内容 |
---|---|
ガバナンス体制 |
|
|
|
ロードマップ・施策 |
|
リスク・機会 |
|
指標・目標 |
|
ステークホルダーエンゲージメント |
|
- 長期ビジョン「GROUP VISION 2030」では、事業成長を前提としたこれらの目標達成を目指しています。ただし、この達成には、自社だけでなくサプライチェーンとの協働や、技術の発展などが欠かせません。また想定を超える気候変動の激化や規制強化がなされる可能性もあります。これらの動向を定期的にフォローしながら、適宜計画を見直していきます。
- また2050年ネットゼロエミッションの達成に向けた、より長期の計画は、技術発展や業界動向などの情報収集を進めながら、今後更に取り組みを推進していく予定です。
- ※1対象カテゴリは1・2・11(Scope3におけるCO₂排出量は当該3カテゴリで9割以上を占める)
- ※2詳細は長期ビジョン「GROUP VISION 2030」
- ※3再生可能エネルギー:以下「再エネ」
脱炭素社会実現に向けたロードマップ
- 当社グループは、2050年ネットゼロエミッションを目指し、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を策定しました。既に、中核会社である東急不動産の事業所および保有施設の使用電力の100%再エネ化、新築ビルの原則ZEB水準化、分譲マンション「BRANZ」のZEH標準仕様化などによりCO₂排出量を削減しています。
- 今後も事業を通じたCO₂排出量の削減を進め、脱炭素を事業機会ととらえ、自社成長を通じて更なる環境負荷低減を目指します。
- 2025年度に向けた具体削減策
-
- RE100達成
- 建物のZEB / ZEH化
- 環境認証取得
- 社内炭素税(ICP)活用
- 2030年度に向けた具体削減策
- 環境関連ビジネスの強化
- 再エネ事業の拡大
- 人と環境にやさしいまちづくり

脱炭素社会実現に向けた施策
- 長期ビジョンでは、CO₂排出量削減目標の達成に向け、以下の取り組みを進めています。当社グループの取り組みは着実に前進しており、東急不動産(株)では、自社の事業所及び保有施設で使用する電力について、2022年12月に100%再エネ化を完了※1し、2024年4月に、国内事業会社として初めてRE100の達成を認定されました。
- 引き続き施設のZEB/ZEH水準化の推進、環境認証取得などの推進を進めます。
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施策 | 目標 | 実績 | トピック |
---|---|---|---|
Scope1,2 | |||
RE100 | 2022年達成 (東急不動産(株)) |
2022年12月に 100%再エネ化切替完了 RE100達成済 |
国内トップレベルの再エネ発電能力を活用 国内の事業会社で最速※2の達成 |
Scope3 | |||
ZEB/ZEH水準※3 | 2025年度:約50% 2030年度:100% |
87%達成 (2023年度) |
2022年3月 全ての新築ビルを原則ZEB水準化 2022年9月 全てのBRANZで原則ZEH標準仕様化 |
その他施策 | |||
環境認証取得※4 | 2025年度:約70% 2030年度:100% |
65.0% (2023年度) |
認証取得の一例:DBJ認証における「5stars」取得物件 東京ポートシティ竹芝・渋谷ソラスタ・日比谷パークフロント |
ICP導入 | 2023年度 経営判断へ導入 |
経営会議で 「見える化」導入済 (2022年度) |
|
GXリーグ賛同 | GXリーグ★基本構想に賛同し 同リーグへの正式参画を決定 |
- ※1共同事業など一部を除く
- ※2RE100 annual disclosure report 2022の巻末リストによる
- ※3ZEB/ZEH Oriented相当またはそれを超える建物性能を有する東急不動産の分譲マンション・オフィス等の施設件数割合(着工ベース)
- ※4非住宅の大型保有物件(延長面積10,000㎡以上)を対象。共同事業など一部除く
★ :「用語と解説」参照
脱炭素社会実現に向けた施策 - 再エネに関する取り組み -
- 当社グループは、戦略投資事業として再エネ事業を推進しています。国内トップレベルの発電能力の更なる拡大を進めます。
長期安定電源化への取り組み
再エネ事業の総投資額 約2,400億円
(2021~2025年度の5年間)
2025年度目標 定格容量 2.1GW※1
(原子力発電所2基分相当※2)
発電源の拡大 |
|
---|---|
再エネの活用 |
|
共創関係・仕組み整備 |
|
- ※1持分換算前
- ※21基当たりの発電量を1GWとして算出
- ※3一般社団法人再生可能エネルギー長期安定電源推進協会
- ※4一般社団法人再生可能エネルギー地域活性協会
★ :「用語と解説」参照
確保済み施設による利益計画と総投資額
【2024年12月末時点】定格容量※5:1,884MW
- 稼働済 93件(太陽光83件、風力7件、バイオマス2件、ルーフトップ1件)
- 開発中 29件(太陽光18件、風力8件、バイオマス等3件)
- *ルーフトップ太陽光は1事業として集計

- ※5持ち分換算前(開発中プロジェクトを含む)
脱炭素社会実現に向けた施策 - 資金調達に関する方針 -
- 新たな事業機会を見据え、事業を通じた脱炭素化を目指すためには、外部からの資金調達は欠かせません。当社グループの気候変動を含むESGへの取り組みを広く周知・推進していくとともに、債券投資家の安定的な投資機会の創出及びエンゲージメントを強化するため、2021年度にESG債発行に関する基本方針として「”WE ARE GREEN” ボンドポリシー」を策定しました。
- ESG債の資金使途については、長期ビジョン「GROUP VISION 2030」にて設定した価値創造への取り組みテーマ(マテリアリティ)に則したものとします。当社の社債発行残高に占めるESG債の比率を2025年度末までに50%以上、2030年度末までに70%以上とすることを目指します。
ESG債比率の推移

ステークホルダーエンゲージメント(政府・上流)
政府とのエンゲージメント
- 環境省の支援事業への積極的な参加を通じた情報提供・事例共有(SBT、ICP、シナリオ分析)や、経済産業省主催のGXリーグ★へ参画しています。また、国土交通省開催の「不動産分野におけるESG-TCFD実務者ワーキング」や、省庁横断「気候変動リスク・機会の評価に向けたシナリオ・データ関係機関懇談会」へ参加しています。
- 金融庁が公表する「有価証券報告書におけるサステナビリティ情報に関する開示」や、TCFDコンソーシアムが公表する「気候関連財務情報開示に関するガイダンス3.0」※1において、当社のTCFD開示が事例集に選定されるなど、先進的な開示を通して、TCFD開示の発展に貢献しています。
- 東急不動産(株)は、(一社)再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)で中心的な立場で活動しています。経済産業省策定の第六次エネルギー基本計画に対し「第六次エネルギー基本計画に対するREASPの考え方」を発表し、気候変動対策を推進するとともに、日本政府へ再エネ関連諸制度について政策提言、調査・研究を実施しています。

上流のステークホルダーエンゲージメント
- 所属している不動産協会では「不動産業における脱炭素社会実現に向けた長期ビジョン」を発表しています。同協会において、気候変動対策を推進するとともに、日本政府へ不動産関連諸制度について政策提言・調査・研究を実施しています。
- 上流(Scope3 カテゴリ1・2)に関する排出量削減目標達成に向けては、排出量の現状把握と、削減に向けた施策の検討・実施が必要です。業界全体で上流の排出量算定精度の向上が求められており、不動産協会は、上流における排出量算定マニュアルを策定しました。当社グループは、協会における「環境委員会」および、その中に設置される「建設時GHG排出量算定マニュアル検討会(及び分科会)」に所属し、上記策定に主体的に参加しました。
★ :「用語と解説」参照

ステークホルダーエンゲージメント(下流)
オフサイト型コーポレートPPA★の取り組み
- 東急不動産(株)と(株)リエネは、(株)髙島屋、デジタルグリッド(株)の二社とともに、速やかな脱炭素社会への移行と、日本国内の再エネ普及に向け、国内初※1の短期契約による大規模オフサイト型コーポレートPPAに取り組んでいます。
- ※1発電所と需要施設が同一法人の契約ではない、単年契約可能なPPA契約サービスを対象とする。(3社(デジタルグリッド(株)、東急不動産(株)、リエネ(株))調べ)

「BRANZ (ブランズ)」全物件ZEH水準化の2023年度へ実施前倒し
- 東急不動産(株)は、脱炭素施策の一環として、着工ベースで2025年度約50%、2030年度100%としていたZEB /ZEH標準仕様化の当初目標を前倒し、2023年度以降に着工する分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」をZEH水準の環境性能とする他、新築ビルにおいても原則ZEB水準の環境性能を目指します。また、2025年度以降に着工する都市型賃貸レジデンス「COMFORIA(コンフォリア)」、学生レジデンス「CAMPUS VILLAGE(キャンパスヴィレッジ)」の全棟でも、ZEH相当の環境性能とします。
- 東急リバブル(株)は、2024年度以降に着工する「L’GENTE(ルジェンテ)」を全てZEH相当の環境性能とします。
物流施設でのグリーンエネルギー活用
- 物流施設「LOGI‘Q(ロジック)」では、入居するテナント企業、およびその荷主企業など向けに、当社グループの再エネ100%電力である「ReENEグリーンエネルギー」を活用した環境負荷軽減サービスを提供しています。物流施設屋上にオンサイトPPA契約という契約方式を通じて太陽光発電設備を設置し、そこで発電した生グリーン電力を当該施設内で活用するほか、当社が全国で展開する再エネの発電所で発電した再エネ100%電力を共用部・専有部へ供給します。

★ :「用語と解説」参照
ステークホルダーエンゲージメント(地域社会)
北海道松前町での地域共生の取り組み
- 東急不動産(株)は、北海道松前郡松前町と企業連携まちづくり計画などの推進業務に係る協定書を締結し、東急不動産(株)の「まちづくり」「再エネ」の知見とネットワークを活用し、地域マイクログリッドの構築を含め、松前町の持続可能な街づくりに向けた各プロジェクトを共同で推進しています。
- 日本でも有数の強い風が吹くという地域資産を活かし、「リエネ松前風力発電所」を開発・運営するだけでなく、マグロ・松前牛・桜といった観光資源等も活かした地域活性化への貢献を目指します。


横浜市立の学校を対象とした太陽光発電設備導入の取り組み
- 東急不動産(株)は、横浜市立の小中学校・高等学校・特別支援学校53校を対象としたPPAによる太陽光発電設備の導入事業者として選定されました。
- 今回の取り組みにより従来と比べて約26%のCO₂削減を目指します。太陽光発電設備および蓄電池の導入により、発電した電力を、昼間は学校で使用するほか、余剰分は蓄電池に充電し、夜間や雨天時等は蓄電池の電力を使用できるようにしています。
- 休日には、市内の商業施設やホテルへ電力を供給することで、市内の再エネ電気比率向上に貢献してまいります。

ステークホルダーエンゲージメント(イニシアティブへの賛同)
各種イニシアティブへの賛同
- 環境先進企業として、各イニシアティブと協働することが重要であると考えています。
- 以下の団体へ賛同・参加し、情報収集や同業他社との連携などを実施しています。
- SBTネットゼロ認定取得の他、2050年までにカーボンニュートラルを目指す国際キャンペーンの「Business Ambition for 1.5°C」および「Race to Zero★」に参加しています。
- TCFDに賛同を表明するとともに、国内の賛同企業による組織「TCFDコンソーシアム」の会員として活動しています。
RE100 国連グローバル・コンパクト★ JCI★ PRI★
★ :「用語と解説」参照
技能・人財開発
- 2050年ネットゼロエミッションを達成するためには、グループ全社員一丸となって気候変動に対して取り組む必要があると考えています。
- そのため、グループ社員の環境意識やサステナビリティ意識を高めるためのプログラムの提供とトレーニングを実施しています。
プログラム提供とトレーニング
- 2022年度に、グループ社員を対象に、サステナブルな取り組みに挑戦する実践者を表彰する「サステナブル・アクション・アワード」を創設しました。年々応募総数が増加し、2024年度は、192案件の応募があり、そのうち30案件が表彰されました。
- また、2024年11月に、グループ社員のサステナビリティ意識浸透を企図し、1か月を通じて体感型イベント開催する「サステナ月間」を開催しました。
- 当社グループでは、グループ社員のサステナビリティ(環境テーマを含む)に対する意識を高めるためにプログラムを提供し、トレーニングに取り組んでいます。
- 半年に1回グループ社員を対象にe-ラーニングを実施し、サステナビリティに関するテーマを取り上げています。また、当社グループのWEB社内報「TFHD GROUP MAGAZINE(T-MAG)」ではサステナビリティに関する記事を多数掲載しています。
- 2024年2月に、グループ社員を対象に、森林保全を通じたサーキュラーエコノミーを題材に、対話型e-ラーニングを実施しました。 GROUP MAGAZINE(T-MAG)」ではサステナビリティに関する記事を多数掲載しています。
気候・自然関連の取り組み
気候・自然関連の取り組み
気候関連の取り組み事例
再エネ電力100%導入の分譲マンション
ブランズタワー谷町四丁目では、全住戸と共用部に実質再エネ100%導入し、入居者とともに脱炭素を進める環境先進マンションを実現しました。

ZEH認証 ブランズ千代田富士見
ZEH oriented 認証取得。室内環境の質を維持しながら、共用部を含むマンション全体で一次エネルギー消費量を20%以上削減を目指します。

物流施設 LOGI’QでのオンサイトPPA活用
「LOGI’Q」に入居するテナント企業とその荷主企業等向けに、再エネ100%電力「ReENEグリーンエネルギー」を活用した環境負荷軽減サービスを提供します。
オンサイトの再生可能エネルギーの活用
様々な事業で太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用しています。リゾート施設の「パラオ・パシフィック・リゾート」や「東急ハーヴェストクラブ熱海伊豆山VIALA」では、太陽光発電システムを導入しています。
また、商業施設の「東急プラザ表参道」では、屋上に風力発電装置を2基設置し、自然エネルギーを取り入れています。
環境認証取得の一例 (DBJ Green Building 認証物件)
5Stars



4Stars



環境認証取得の一例(CASBEE認証)
2019年に、本社オフィスとなる「渋谷ソラスタ」において、CASBEEの新認証である「CASBEE-ウェルネスオフィスの最高位となる「Sランク」を取得しました。

ZEB認証物件の一例
東急コミュニティー技術研修センター NOTIA(2019年竣工)
都内事務所ビルではじめて、Nearly ZEB 認証を取得。2020年度には基準を上回る一次エネルギー消費量約87%削減を達成しました。

COCONO SUSUKINO(2023年竣工)
商業・ホテル系複合用途の建築物全体での取得として全国最大規模となる「ZEB Ready」認証取得。

集合住宅向けBEV・PHEV充電サービスの共同実証
(株)東急コミュニティ―は、2025年1月より、首都圏で管理運営業務を担うマンションで、株式会社デンソーが開発中のBEV・PHEV向け充電システムを活用した集合住宅向け充電サービスの共同実証を開始しています。
再生可能エネルギー100%のデータセンター
北海道石狩市で、2024年9月、再生可能エネルギー100%で運営する「石狩再エネデータセンター第一号」に着工しました。東急不動産(株)が出資する石狩地域エネルギー合同会社および、 100%子会社である(株)リエネが連携し、オンサイトPPAの方式で再エネ電力を直接供給します。
物理的リスクへの対応
- 東急住宅リース(株)は、大規模災害の危機が発生した状況における事業継続などの取り組みが評価され、(一社)レジリエンスジャパン推進協議会における国土強靭化認証団体認証「レジリエンス認証」を取得しています。
- 東急不動産(株)は、保有する「渋谷南東急ビル」について、(一社)日本不動産研究所における自然災害に対する不動産のレジリエンスを定量化・可視化する認証制度である「ResREAL(水害版)」の認証を取得しました。(認証グレード:GOLD)
- 東急不動産(株)は、建物の立地選定及び、テナント・居住者との連携によるBCP強化を実施しています。


自然関連リスク・機会、依存・インパクトに関する取り組み
当社グループにおけるこれまでの、リスク・機会・インパクトに関する具体的な取り組みをご紹介します。主な取り組みとして、以下を取り上げました。
- 都市開発事業:まちづくり、緑化技術、植栽管理
- ホテル・レジャー事業:森林経営、海洋保全、蓼科における自然との共生
- その他:外来生物対策、汚染低減、廃棄物削減、資源循環、水利用削減、建物の長寿命化
都市開発事業における取り組み ~まちづくり~
広域渋谷圏のまちづくり
渋谷駅を中心とした「広域渋谷圏」では、「広域渋谷圏構想(Greater SHIBUYA 1.0)」をさらに進化・深化させ、新たなまちづくり戦略「Greater SHIBUYA2.0」を策定し、職・住・遊の3要素を融合させるとともに、その基盤として「デジタル」「サステナブル」の取り組みを推進しています。「サステナブル」に関しては、緑豊かな環境整備や脱炭素の推進、レジリエンスの強化など、誰もが安全・安心で快適に過ごすことができ、最先端の環境対策が施されている持続的に成長するまちづくりを行っています。
GREEN WORK STYLE
オフィスビルにおいて、健康と安全、環境とサステナビリティを意識しながら、多様なグリーンの力で、“ワークプレイス”と“オフィスソリューション”の両面から、企業価値の向上とワーカーのウェルビーイングの実現をめざす「GREEN WORK STYLE」を展開しています。緑にふれあう働き方を実現することで、日々のストレスを軽減し、一人ひとりの生産性を最大限に引き出すとともに、円滑なコミュニティ形成に貢献します。
渋谷ソラスタ
オフィスフロアのすべての階にテナント用のグリーンテラスを設置。オフィス環境に不足する緑や新鮮な空気を身近に感じていただくことで、ワーカーのみなさまのストレス軽減と生産性向上に寄与します。また、「爽やかな空の下で働く場所」として、最上階には屋上空間を活用したスカイテラスとラウンジ(右写真)を設けています。

都市開発事業における取り組み ~まちづくり~
広域渋谷圏におけるエコロジカルネットワーク形成と2030年度KPI目標の設定
生物多様性に配慮した都市緑化が重要であることから、広域渋谷圏では、生態系を保全するために事業拠点において屋上緑化・壁面緑化などの積極的な緑化を行っています。周辺の緑をつなぎ、そこに住む生きものたちの中継地点を担うことで、広域渋谷圏のエコロジカルネットワーク形成に取り組んでいます。
特に地域への影響が大きい大規模物件の開発時には、計画時に周辺の生態系調査を実施し、生息する鳥類や昆虫類に配慮した植栽で緑化し、地域の生物多様性保全を進めています。

- 目標
- 建物緑化(屋上・壁面など)* 2030年度目標100%
*オフィスビル・商業施設の新築大型物件
イメージ図

生物モニタリング
商業施設「東急プラザ表参道『オモカド』」の屋上テラス「おもはらの森」では、緑地の生態系の推移を把握するために、自然環境保全の専門家である㈱地域環境計画の協力のもと、1年を通じて定期的に生き物調査を実施しています。(前述)

生物多様性認証制度への参加
特に周辺に自然環境が多く敷地内にも多くの緑地確保が可能な物件においては、生物多様性の確保を後押しするためにもABINCなどの認証を取得することを奨励しています。

東京ポートシティ竹芝での自然と共生するまちづくり
国家戦略特区である東京都港区竹芝エリアでは、産学連携やテクノロジーを活用したまちづくりを行い、環境(サステナビリティ)など、エリア全体の魅力・活力を高める長期持続的な取り組みを進めています。
プロジェクトの中核「オフィスタワー」は地上40階、地下2階、総延床面積約18万m2からなる大型複合施設です。高層階はオフィスエリア、低層階は商業エリアとなり、6階のオフィスロビーは、地域と調和する水と緑を取り入れた空間を演出しています。
2~6階南東側には階段状に広い「スキップテラス」が設けられ、「空・蜂・水田・菜園・香・水・島・雨」の8つの景からなる、里山的景観の「竹芝新八景」を配置しています。浜離宮恩賜庭園、旧芝離宮恩賜庭園と周辺の豊かな緑と連動した生態系ネットワークを形成することで、地域の生物多様性に貢献することを目指しています。
広さ145平方メートルの水田が設けられた「水田の景」や野菜や果物を栽培する「菜園の景」では、近隣の保育園児や入居しているテナント関係者、住居棟の住民たちが参加する田植えや収穫のイベントを通じてステークホルダーへの環境教育につなげています。
また、ミツバチの巣箱を置いた「蜂の景」や、5、8、10、12階の人の視線が届きにくい壁面に設置された巣箱である「空の景」は、ミツバチやハヤブサやチョウゲンボウなど猛禽類の生息地を提供することで、都心の生物多様性に貢献しています。

オフィスタワー



(水田の景)
都市開発事業における取り組み ~緑化技術・植栽管理・グリーンインフラ~
グリーンインフラに基づく多様な技術による緑化、植栽管理
当社グループの造園建設を中心とする環境緑化事業を担う(株)石勝エクステリアではグリーンインフラ(注)という考え方に基づき、屋上緑化、壁面緑化などの都市緑化技術をはじめ様々な技術を駆使し、防災・減災や自然・生物多様性の保護・保全、持続可能な街づくり、様々な緑地の管理受託に取り組んできました。
(注)グリーンインフラとは
グリーンインフラとは、自然環境が有する、地球温暖化の緩和や生物の生育場所の提供、景観形成や文化的サービスの提供などの機能がもたらす、防災・減災や環境保全といった多様な効果を、様々な社会課題解決に活用しようとする考え方です。国土交通省のまちづくりGX戦略の中でも、グリーンインフラとして多様な機能を有する都市緑地の質・量の確保を官民で連携して一層推進することが挙げられるなど、その重要性や注目度がますます高まっています。


石勝エクステリアの技術について
造園・緑化事業で推進してきた環境緑化技術・ノウハウを、グリーンインフラの考え方のもとに再構成し、お客様をはじめ様々なステークホルダーの皆さまへ展開できるグリーンインフラメニューを策定し、グリーンインフラ実現の取組みを促進するシステム「Greentect」(グリーンテクト)として、あらゆる事業に活用していきます。システムにより、可視化したメニューは、造園・緑化 関連分野における広範の技術・ノウハウを一覧表にし、8つの大項目で区分しています。案件ごとに、営業段階でメニューを活用し、採用技術項目を定め、設計・施工・管理・運営の実施に組み込むシステムです。
例:樹木移植工法(TPM工法)
TPMはTrans Planting Machineの略で、世界に2台しかない石勝エクステリア独自の専用機械を使用することにより、従来は難しいとされてきた大径木の移植を可能にした技術です。地域の資産である大樹を守りながら、緑化プランの自由度を高めます。

例:立体型緑化工法(バイオキューブ)
立体形状の複数面に植栽を施します。箱型なので取り扱いが簡易で、省スペースかつ多面的な緑化を実現します。

グリーンインフラメニュー

メニュー例

場内移植(樹木)TPM工法

レインガーデン(溜め池)

在来種活用(代償植生)

自然素材土留め

パーゴラ、オーニング

樹木診断、土壌診断
Green Agenda:緑ある景観を計画・育成する植栽管理
石勝エクステリアではマンションにおいて、生命を育む住環境を実現するみどりを計画・施工し、未来につないでいくための植栽管理計画書(アジェンダ)を作成、管理計画書に基づいた計画と管理、見える化技術を一体的に行っていく「Green Agenda」を推進しています。
環境の時代の要求に適う住まいのみどりを実現する中で、中長期間で植栽を捉え“見える化”しながらお客様のグリーンへの「関心」や「共感」を醸成します。これまでの
造園技術を発展させ、都市開発での生物多様性保全と回復に貢献する持続可能なこれからの造園サポートサービスを目指しています。


ホテル・レジャー事業における取り組み ~方針の策定~
ウェルネス事業における2030年度までに目指す姿
当社グループにおける環境経営を推進するため、ホテルやレジャーを含むウェルネス事業では、3つの環境重点課題を踏まえ、ホテル・リゾート事業およびヘルスケア事業を含むウェルネス事業地における2030年度までの目標数値を策定しています。
- 「生物多様性」:ウェルネス事業地において、2030年度までに40%の面積の事業地を保全※1
- 「循環型社会」:ウェルネス事業において、廃棄物を2030年度までに11%削減(2019年度比)※2
- 「脱炭素社会」:ウェルネス事業において、CO₂を2030年度までに46.2%削減(2019年度比)※2
- ※1保全された面積とは、①OECM認定その他の生物多様性・緑地保全系の環境認証を取得する対象土地の面積、
②国立公園・国定公園・自然公園の区域内に該当する面積、③森林法に基づく森林経営計画の作成の対象となる森林面積を指します。 - ※2東急不動産ホールディングスグループの目標数値に準じます。


リゾート施設を「体感型サステナブルリゾート」へ
上記の目指す姿を実現するためには、施設の開発時だけでなく、販売・運営時にわたり、リゾート施設を訪れるお客様やステークホルダーの皆様に、リゾート施設ならではの地域・自然と共生することの重要性を体感いただき、日常における環境意識の向上につながるきっかけを提供することが大切です。

リゾート施設の運営を担う東急リゾーツ&ステイでは、「もりぐらし®」を掲げ、森のアクティビティやグランピングワーケーションといった、地域の共有財産である森との調和やサステナビリティを包含し、地域住民・従業員が一体となった地域課題解決・自然保護を推進してきました。さらに2024年には、「リゾートの力で、地域に幸せな『めぐり』を」を新たなスローガンとして掲げました。「生物多様性を育む」・「地域の未来を創る」・「地域のエネルギーを活かす」という3つのテーマに基づき、楽しみながら地球や地域に優しく過ごすことのできるサステナブルな空間や体験、活動を作り、施設を訪れるお客様に提供する「体感型サステナブルリゾート」を目指しています。
各リゾート施設のイベント情報や提供価値はWEBサイト「ENJOY GREEN GUIDE」でも発信しています。
ホテル・レジャー事業における取り組み ~モニタリングとOECM認定~
30 by 30への賛同と自然共生サイト(OECM)
当社グループは、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする国際目標の30by30に賛同しています。
「東急リゾートタウン蓼科」では、30by30の達成を目指す取り組みの一環として、2022年度に環境省が認定する「自然共生サイト(民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を認定する制度)」の課題調査事業に参加し、2024年2月にスキー場・ゴルフ場を含めたリゾート施設として初めて「自然共生サイト」の認定を取得しました。
豊富な生物多様性を守るため、森林管理や生物モニタリング調査を行っています。2023年時点で1,699種の動植物が確認され、環境省や長野県のレッドリストに含まれる希少種が32種類と多く確認されました。
植物種は605種確認され、この中にはジロボウエンゴサク等の10種の希少種が含まれます。鳥類は、ホオアカ等4種の希少種を含む65種、昆虫類・爬虫類・両生類は、アカマダラセンチコガネなど18種の希少種を含む1,018種が確認されています。これらのような草原性動植物含め、特徴的で多様な生息・生育などが評価されています。
生物多様性行動計画(BAP:Biodiversity Action Plan)
当社グループでは事業地域の中で特に保全上重要なエリアについて生物多様性行動計画(BAP)を策定し、生物多様性保全に取り組むこととしています。「東急リゾートタウン蓼科」では、別荘地およびその周辺の樹林地等において動植物の生息・生育環境に関するモニタリング調査を実施し、希少な動植物種や生息・生育環境に対する脅威があれば対策を検討し、緑地の管理計画に生かしていく予定です。

(レッドリスト)


(レッドリスト)
ホテル・レジャー事業における取り組み ~蓼科における自然との共生~
森林経営の取り組み
「東急リゾートタウン蓼科」では2018年から森林経営計画を立て保全間伐を行っています。これにより下草が茂り、樹木の根が強化されるなど森林の育成が促進されるとともに、地盤が強固になることで崖崩れなどの自然災害を防ぐことにもつながります。更に自然・生物多様性の保全やエネルギーの地産地消に貢献する取り組みとして、間伐材をウッドチップに加工し、バイオマスボイラーの燃料として活用する取り組みを行っています。バイオマスボイラーにはCO₂吸収・固定化装置を導入、排煙に含まれるCO₂を原料にしたゴルフティーやボトル&スリーブを製作し、提供しています。
また、適切な間伐は、木の成長を促進しCO₂の吸収量を増加させます。2022年、企業などが削減したCO₂を国がクレジットとして認証する「J-クレジット制度」において、総合デベロッパーとしては初めて、森林経営活動に基づくJ-クレジットの認証を受けました。



カラマツ間伐材の活用
長野県諏訪市にある障害福祉サービス事業所『NPO法人ふぉれすと 森の工房あかね舎』や下諏訪の『荒木縫製有限会社』と協働して製作したシューズの招集・乾燥剤として使える『カラマツのサシェ』や、カラマツの香りを生かした『フォレストキャンドル』や『ウッドディフューザー』、ナチュラルな香りの虫よけ『カラマツのアウトドアスプレー』を「ordinary(日常)」シリーズとして販売しました。また、「special(特別)」として、特別な一品のクラフトビール『カラマツのHAZY IPA』も販売しました。
その他、2023年9月にオープンした、当社グループの新築分譲マンションブランド「BRANZ(ブランズ)」の統合マンションギャラリー 「東急不動産 BRANZギャラリー 表参道」においては、「東急リゾートタウン蓼科」における森林保全活動で発生した間伐材をフローリングやデザイン家具といった形で活用しています。


クリーンアップ&ウォーキング「もりこみち」
「東急リゾートタウン蓼科」には年間を通じて多くの人が往来し、自然と外来種の植物が入り込んでいます。2021年度より定期開催している「もりこみち」では、「東急リゾートタウン蓼科」の5つの「小径(こみち)」でウォーキングを楽しみながらごみ拾いをしたり、蓼科の生態系をこわす恐れのある外来種の除草をしたり、枝木や落ち葉の除去などを行っています。

「ブッシュクラフト」による「もりぐらしイベント」の開催
長野県の補助事業「県民協働による里山の整備・利用事業」を活用し、地域の皆様が森や自然環境に理解を深め、美しく健全な森を未来につないでいくことを目的に、本イベントを開催しました。地域の子供たちを対象に「ブッシュクラフトと植樹体験」をテーマに、火おこし体験や植樹を実施したほか、別荘オーナーや地域住民の方を対象に、チェーンソーの正しい扱い方をメインとした「樹木管理講習」、薪づくり体験を実施しました。

森の中で働く「ワークラボもりぐらし」
別荘オーナーラウンジであった「せせらぎ館」を活用し、茅野市で展開する「ワークラボ」のブランド名を冠したワーキング施設として、リニューアルオープンしました。タウン内は宿泊やアウトドア施設が充実し、宿泊・日帰りのどちらでも、リゾートを楽しみながらワーケーションいただけます。フリースペースの家具は一人一人のお客様がリラックスしながら仕事に取り組めるように、セミプライベート型のおこもりソファーや、システムソファーを用意したほか、会議室や個室ブースも設け、web 会議の実施など様々な働き方に対応しました。

お客さま参加型の生物調査イベント「たてしなダーウィンツアー」を企画
「東急リゾートタウン蓼科」には、希少種を含めて多くの動植物が生息しています。株式会社バイオームと協働して、同社の開発した、スマホカメラでいきものを撮影するだけで名前を判定できるいきものコレクションアプリ「Biome(バイオーム)」を活用し、生物多様性の取り組みを身近に感じていただけるよう、お客さま参加型の生物調査イベント「たてしなダーウィンツアー」を企画しました。お客様にBiomeを活用いただくことで、豊かな自然をより身近に体感していただくと同時に、集積されたデータはタウン内のモニタリングデータとしても活用可能で、蓼科におけるネイチャー・ポジティブに向けた取り組みの推進に活用される予定です。

耕作放棄地をワイン香るブドウ畑へ!ブドウ苗木の植樹体験会
長野県茅野市で2023年に開設されたワイナリー「オレイユ・ド・シャ」の畑で、ワイン用ブドウ苗木の植樹体験会を行いました。全国的に増加し、社会問題となっている耕作放棄地をブドウ畑に生まれ変わらせる取り組みで、耕作放棄地の活用により、環境問題や地域の課題に取り組むことが可能となります。およそ3年後の豊かな収穫を思い描きながら約720本のブドウが植えられました。
地区防災計画に基づく訓練の実施
タウン内では、過去に大雨による土砂災害があり、2015年3月には「土砂災害防止法」に基づく「土砂災害警戒区域及び特別警戒区域」の指定が告示されています。こうした中、利用者の安全確保を第一に考え、地区防災計画の周知と班体制での行動確認を目的として、タウンセンターほかホテル、ゴルフ場などタウン内施設が連携して、情報伝達と指示、巡回・報告、避難誘導の訓練を実施しています。

食や森の循環を学び、体感できる「エディブルガーデン」
「東急リゾートタウン蓼科」で、野菜やハーブ、果樹や食用の花などの栽培・収穫を通じ、食や森の循環を学び、体感できる「エディブルガーデン」が2023年8月にグランドオープンしました。
タウンでは、2023年3月に「コンポスト(生ごみ処理機」)を導入し、タウン内にあるホテルのレストランから出る生ごみを良質な堆肥に変えて地元農家へ提供するなど、環境保全と食の循環、地域との連携を実現してきました。
「エディブルガーデン」は“食べられるお庭”をテーマにした体験型スポットで、お客さまが野菜などの栽培や収穫に触れ、採れたてのものを食べることで、自然との共生を楽しみながら食の循環や森の循環を学び体験していただける施設です。

「TENOHA蓼科」による地域と環境の共生
「東急リゾートタウン蓼科」では、2024年7月、“地域連携”と“環境配慮”の価値創出および発信の拠点としてTENOHA蓼科をオープンしました。1978年に初めて別荘地を分譲して以来、長きにわたって自然との共生を続けてきた当タウンでは、森林の樹木密集を抑制するために木を間引く保全間伐を実施してきました。TENOHA蓼科内の壁面や家具、什器は全てタウン内の間伐材を使用して作られており、これら家具や什器はTENOHA蓼科のコンセプトに共感いただいた地域の製材所や工房協力の下で製作しており、地域連携の在り方を実現しています。
また、TENOHA蓼科に隣接する広場内においては長野県産の木材をふんだんに使用して木材の地産地消を徹底し、また広場の入口ゲートには、木材だけでなく、地域の石材や、工事の際に出たガラス廃材をアップサイクルして作ったガラスブロックを使用し、地域循環の輪を表現しています。オープニングイベントのまちびらきマルシェにより地域コミュニティ創出の拠点としての第一歩を踏み出しました。


ホテル・レジャー事業における取り組み ~海洋保全と文化の尊重~
パラオ・パシフィック・リゾートにおける自然・地域との共生
「パラオ・パシフィック・リゾート」は、パラオ共和国に1984年に開業した、パラオの自然・文化を存分に体感できる本格的なビーチリゾートです。約250mのプライベートビーチからは一年中絶景のサンセットを望むことができるほか、広大な敷地には、熱帯植物に彩られたトロピカルガーデンを有し、樹木生い茂る裏山では、89種類の植物やビーブという名前の国鳥(カラフルで小型のハト)などパラオの固有種を含む35種類の鳥類を見ることができます。
本リゾートは、開発当初から、「環境保全と開発の両立」と「地元に貢献し、地元の人々に受け入れられる事業」をコンセプトとしています。


海の再生に向けた取り組み
泥土の流出によりサンゴが生息しにくかった本リゾート前の海岸では、綿密な調査に基づきサンゴの移植を伴う海浜改修を行うことで生物が豊富な海の再生に成功し、現在ではパラオ共和国コロール州により海洋生物保護区に指定されています。また、パラオ共和国内の環境保護団体及びサンゴ研究施設などへの支援を継続的に実施し、地元と協働しながら海洋保全・地域保全に取り組んでいます。

現地社会への貢献
「パラオ・パシフィック・リゾート」の全従業員の約8割はパラオ人であり、本リゾートはパラオ人の雇用創出に加え、ホテル・観光業での人材教育などを通して、地域社会に貢献してきました。
また、開発にあたっては、現地文化を尊重しており、屋根はパラオの伝統建築アバイ(集会場)を模しているほか、インテリアにはパラオの文化や伝説がモチーフとして取り入れられています。

その他の取り組み ~水資源利用の削減~
水資源の利用によるネガティブインパクトの低減
当社グループは、設計会社・施工会社・お客さまや地域社会などのステークホルダーと協働して、事業活動および保有するオフィスビル、商業施設、リゾート施設などにおいて、それぞれの地域固有の水資源問題に応じた適切な管理および水資源の効率的な利用により、水資源の保全に取り組んでいます。
- 目標
- 事業拠点および保有する不動産ポートフォリオにおける床面積あたりの水資源利用を、2030年度まで前年度比低減
節水設備導入による水使用の削減
2013年に自然調和型リゾートホテルとして開業した「東急ハーヴェストクラブ熱海伊豆山&VIALA」は、節水型トイレの採用によって上水利用の低減につなげるなど水資源に配慮した取り組みを行っています。「東急ハーヴェストクラブ箱根甲子園」および「東急ハーヴェストクラブVIALA箱根翡翠」でも、敷地内の井水を利用するなど水の有効利用を推進しています。

VIALA箱根翡翠
パラオ・パシフィック・リゾートにおける水資源保護
パラオ共和国の公共水道水は長年配管の老朽化により飲料水には適さず、また乾季の1月~4月には深刻な水不足に陥ることがあるなどの課題を抱えています。「パラオ・パシフィック・リゾート」では安定的により安全な水を供給するため、水道インフラシステムを独自で構築しています。敷地内の井水・沢水を主な水源としながら、渇水時期対策として海水淡水化装置を備えるなど独自の浄水システムにより飲料水の確保と水資源保護に努めています。

その他の取り組み ~外来生物対策、汚染・廃棄物削減~
外来生物の対策
外来生物法(環境省)による「外来生物」とは、もともと日本に生息していなかった種であり、人間の活動により、意図的・非意図的に国内へ入ってきた動植物を指し、地域の生態系に影響被害を及ぼすおそれがあります。当社グループではマニュアルを設定し、侵略性の高い外来種を発見した際の対処を定め、地域の生態系の保全に取り組んでいます。



汚染によるネガティブインパクトの削減
当社グループでは、設計会社・施工会社などのステークホルダーと協働して、汚染物質の排出防止やその原因となる材料を使用しないことで、環境に及ぼす影響の低減に取り組んでいます。
その他の取り組み ~資源循環~
資源循環
当社グループでは、事業に使用する資源の有効利用の必要性を認識し、設計会社・施工会社・利用されるお客さまなどのステークホルダーと協働して、適切で有効な資源利用に取り組んでいます。
木材資源利用で循環型サイクルを形成 「みどりをつなぐ」プロジェクト
「みどりをつなぐ」プロジェクトは、当社グループがお客さまなどステークホルダーと一緒に、森林を保全する取り組みです。「百年の森構想」を進めている岡山県西粟倉村の森林保全活動と連携し、マンション購入や管理受託、オフィス、ホテル・レジャー施設の利用、中古住宅の売買仲介、といったさまざまなご利用に応じて森林を保全しています。例えば、住宅1住戸の販売毎に森林保全面積10㎡など、当社グループの販売実績に応じて、森林保全資金を提供しています。近年では、西粟倉村の森林管理で生成されるJ‐クレジットをあわせて購入する形とし、森林Jクレジットの普及にも貢献しています。これまで2,000ヘクタールを超える森林保全を実現し、2030年度に3,000ヘクタールの森林保全を目標に、毎年のKPIとして進捗管理しています。
保全森林から産出される木材はグループのさまざまな事業で活用し、お客さまへ提供するという循環型サイクルを形成しています。西粟倉村の森林保全活動を通じて発生する間伐材を購入して建築工事に活用する取り組みも積極的に進めており、2022年度においては38㎥の間伐材を、現地の当該森林のFSC認証木材の加工・販売を行っているFSC CoC認証業者から直接購入し、住宅や商業施設3棟のリノベーション工事において内装材として利用しました。
木材の地産地消
2022年12月に開業した会員制リゾートホテル東急ハーヴェストクラブVIALA鬼怒川渓翠においては、開発地内で伐採した樹木を共用部の家具などの材料として活用しています。





VIALA鬼怒川渓翠
Forestgate Daikanyamaにおけるサーキュラーエコノミーの取り組み
Forestgate Daikanyamaは、賃貸住宅・シェアオフィス・商業施設で構成されるMAIN棟とサステナブルな生活体験を提供するTENOHA棟の2棟からなる、2023年10月に開業した複合施設です。
TENOHA棟は、カフェとイベントスペースで構成され、サステナブルな生活体験の提供や、サーキュラーエコノミー活動を行う事業者や行政と連携し、地域と都市をつなぐ活動拠点です。消費者にサステナブルな取り組みへの接点を提供しながら、さまざまなステークホルダーと連携し、サーキュラーエコノミーを実現します。 建物は、東急不動産ホールディングスの保全対象森林、岡山県西粟倉村の間伐材を構造材として活用した木造建築となっています。


循環型建築、リノベーションの推進
東急不動産、東急リバブル、東急Re・デザインは、再生・保全建築、リフォームやリノベーションの推進を通じて、廃棄物の削減、資源循環に貢献しています。

(保存部分)

その他の取り組み ~建物の長寿命化~
大規模改修の長周期化による資源利用の削減
(株)東急コミュニティーは、マンションにおける大規模改修工事の周期を、従来12年と言われていたものが、最大18年に延長できる長期保証商品「CHOICE」を販売しています。
大規模改修工事で用いる仕様・工法等の工夫により、防水、塗装など建物の外装に関わる工事の保証期間を従来に比べ 1.5~2 倍に延長しています。これにより、築60年のセカンドステージを迎えるまでの大規模改修工事の回数を削減することが可能となりました。大規模改修工事の回数削減により、マンションのライフサイクルを通じた利用資源の削減と、トータルのライフサイクルコストの低減に貢献しています。
「EMドック」建物総合診断による建物活用
EMドックとは Enchanted in 1 minute(1 分で魅了する)をコンセプトに、オフィスビルにおいて通常の建物・設備点検では行われない分析調査を行い、1 枚のシートに見やすく、分かりやすく調査結果をまとめ、お客さまにご提示する仕組みです。
EMドックを通じ現状の省エネ性能を診断することで、当社独自の分析結果により BELS 認証のレベルを判断し、今後の適切な管理・修繕工事の提案・支援を行うことが出来ます。
また、お客さまが多面的に建物の管理運営上の課題を把握し、それらに関して意識・関心を持っていただくことにより、ビルの安全性や建物資産価値の向上が実現できる施策提案を目的としています。EMドックを通じ、建て替えをせずとも建物資産の環境価値を高め、ZEB・BELS認証取得へ適切な提案・支援を行うことが可能となります。


参考資料・用語と解説
参考資料・用語と解説
Appendix:TNFDフレームワークの構成
TNFDフレームワークは、4つの柱で構成された14項目の開示提言と、4つの柱に横断的に適用される基本的な考え方である6つの「一般要件」で構成されており、これら項目に関する開示が推奨されています。
開示フレームワークの概要
この表は左右にスクロールできます
一般要件 | |||
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① マテリアリティの適用 ② 開示のスコープ ③ 自然関連課題の地域性 ④ その他のサステナビリティ課題との統合 ⑤ 考慮した時間軸 ⑥ 先住民、地域コミュニティ、影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント |
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ガバナンス | 戦略 | リスクとインパクト管理 | 測定指標とターゲット |
自然関連の依存・インパクト、リスク・機会に関する ガバナンスを開示する。 | 自然関連の依存・インパクト、リスク、機会が、ビジネス モデル、戦略、財務計画に 与える影響を、その情報が重要である場合に開示する。 | 自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を特定・評価・優先順位付け・モニタリングするために使用しているプロセスを開示する。 | 重要な自然関連の依存、インパクト、リスク、機会を評価・管理するために使用される測定指標とターゲットを開示する。 |
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Appendix:TNFDフレームワークとLEAPアプローチ
TNFDでは、企業が自然関連の依存・インパクトやリスク・機会を把握するための任意アプローチである「LEAP」が提示されています。下表は、TNFDで示されている、LEAPの各フェーズが、前頁に示した14項目の開示提言のいずれに対応しているかを整理したものです。本レポートでは、LEAPアプローチを参考に検討した結果を、「一般要件」および「TNFD開示提言」に沿って開示しています。
LEAPアプローチの概要と開示提言への対応関係
この表は左右にスクロールできます
Locate 自然との接点の発見 |
Evaluate 依存/インパクトの診断 |
Assess 重要なリスク/機会の評価 |
Prepare 対応/報告のための準備 |
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上記LEAPアプローチは、以下の開示提言に対応 | |||
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用語と解説
自然の観点での優先地域評価に用いた指標
Biodiversity Intactness Index | 最低限の攪乱しか受けていない場合と比べて、どの程度の種が残っているか、%で示した指標(所謂「手つかずの自然」が100%で、当該地の生態系に手を加えた結果、どれほど生物種が残っているかを表す。)
(出典:Newbold et al.(2016)”Global map of the Biodiversity Intactness Index, from Newbold et al(2016)”) |
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生物多様性重要地域(KBA) | 国際基準により選定された、生物多様性保全の鍵となる重要な地域。 |
STAR指標 | そこでの種の脅威軽減活動が世界全体の絶滅リスク軽減に寄与する可能性を定量化した指標。 |
保全優先度 | 生物種の分布情報を踏まえ、生物種の絶滅を防ぎ生物多様性を保全する上での優先度を表した指標。
(出典:(株)シンク・ネイチャー 日本の生物多様性地図化プロジェクト) |
ベースライン水ストレス | 流域の水供給量に対する水消費量の割合に基づき、流域における水のひっ迫度を表した指標。 (出典:WRI Aqueduct (2023年6月参照)) |
用語
TCFD | Task force on Climate-related Financial Disclosures「気候関連財務情報開示タスクフォース」:2015年、G20の要請を受けた金融安定理事会(FSB)が、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設置。2017年に最終報告書を公表、2021年に改訂。気候変動への取り組みを企業や機関がどのように行なっているかを、下記項目について積極的に開示することを推奨している。 開示推奨項目:ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標 |
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TNFD | Taskforce on Nature-related Financial Disclosuresの略。国連開発計画、世界自然保護基金、国連環境開発金融イニシアティブ、グローバルキャノピーの4つの機関によって、2021年に発足した自然関連財務情報開示タスクフォース。自然関連の依存・インパクト、リスクと機会を適切に評価し、開示することを要請。 |
SBT1.5°C目標 | Science Based Targets:パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2°Cを十分に下回る水準(Well Below 2°C)に抑え、また1.5°Cに抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~10年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標。 |
RE100 | Renewable Energy 100%:事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする、世界の企業が参加する国際的な協働イニシアティブ。 |
ICP(社内炭素税) | Internal Carbon Pricing:企業が独自に炭素価格を設定し、炭素税の事業影響を可視化したり、組織の戦略や意思決定などに活用する手法。CO₂排出に価格をつけ、排出者の行動を変革させる“カーボンプライシング”の方法のひとつ。 |
国連グローバルコンパクト | United Nations Global Compact(UNGC):1999年の世界経済フォーラムにおいて、国連が企業に対し、人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則を順守し実践することを提唱したイニシアティブ。 |
IEA | 第1次石油危機後の1974年に石油消費国のエネルギー事情を改善することを主な目的とし、経済協力開発機構(OECD)枠内の国際機関として設立。 |
ZEB/ZEH | net Zero Energy Building / net Zero Energy House:年間の一次エネルギー消費量がネットゼロまたはマイナスとなる建築物。従来の建築物と比較し、省エネ量と創エネ量を合算して削減量を見る。 |
LEAP | Locate, Evaluate, Assess, Prepareの略。TNFDが提唱する、企業や金融機関が自社の自然関連のリスクと機会の評価をサポートするためのアプローチ手法。Locate(自然との接点の発見)、Evaluate(依存関係/影響の診断)、Assess(重要なリスク/機会の評価)、Prepare(対応/報告のための準備)の4つのステップから構成される。 |
BCP | 事業継続計画(Business Continuity Plan)の略。企業が自然災害などの緊急事態に遭遇した場合に、資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続・早期復旧を可能とするため、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法・手段などを取り決めておく計画。 |
LCP | 生活継続計画(Life Continuity Plan)の略。自然災害などの緊急事態の際に、資産の損害をとどめつつ、居住や生活を継続するための計画。 |
ENCORE | UNEP-NCFA(自然資本金融アライアンス)が開発した金融機関向けツールで、業種別の自然への依存・インパクトの重要性の把握や、生態系サービスの分布などを分析することが可能。 |
文化的サービス | 人間が自然にふれることで得られる、審美的、精神的、心理的な面などで影響を受ける文化的なサービス。 |
十全性 | 生態系の構成、構造、機能が自然の変動範囲内にある度合いとされている。 (所謂「手つかずの自然」に対して当該地の生態系に手を加えた結果、どれほど生物種が残っているかを表す。) |
間伐 | 育てようとする樹木どうしの競争を軽減するため、樹木の混雑度に応じて一部の樹木を伐採すること。 |
皆伐 | 森林を構成する林木の一定のまとまりを一度に伐採する方法。 |
森林経営計画 | 森林所有者や森林の経営の委託を受けた主体が、自らが経営する森林を対象に森林の施業・保護について作成する計画。 |
エコロジカルネットワーク | 対象となる地域において優れた自然条件を有する場所を、生物多様性の拠点(コアエリア)として位置付けつつ、野生動物の移動・分散を可能とするため、コアエリア間を生態的回廊(コリドー)で相互に連結させる考え方。 |
IPCC | 1988年に人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。 |
SBTs for Nature | Science Based Targets for Natureの略。企業の自然資本関連の目標設定に関し、利用可能な最善の科学に基づき、測定可能、実行可能で、期限付きの目標設定を求めるイニシアティブ。 |
調整・維持サービス | 気候調整や局所災害の緩和、土壌侵食の抑制、有害生物や病気を生態系内で抑制する効果など、生物多様性により環境を制御・維持するサービス。 |
Scope1・2・3 | 国際的な温室効果ガス排出量の算定・報告の基準である「温室効果ガス(GHG)プロトコル」の中で設けられている排出量の区分。排出主体によって、「Scope 1(直接排出量)」「Scope 2(間接排出量)」「Scope 3(その他の排出量)」の3つに区分し、これら3つの合計を「サプライチェーン全体の排出量」とする。 |
Race To Zero | 世界中の企業や自治体、投資家、大学などの非政府アクターに、2030年までに温室効果ガス排出量実質を半減するため、その達成に向けた行動をすぐに起こすことを呼びかける国際キャンペーン。 |
GXリーグ | (GX:Green Transformation)持続可能な成長実現を目指す企業が、同様の取り組みを行う企業群や官公庁、大学と一体となり、経済社会システムの変革や新たな市場を作るための実践を行う場。 |
マイクログリッド | 小規模電力網。エネルギー供給源と消費施設を一定の範囲でまとめて、エネルギーを地産地消する仕組み。 エネルギーの供給には、太陽光や風力といった再生可能エネルギーなどの「分散型電源」が利用される。 |
FIT | Feed In Tariff(固定価格買取制度):太陽光発電のような再エネで発電した電気を、国が決めた価格で買い取るよう、電力会社に義務づけた制度。 |
FOURE | Reciprocal and Regional Revitalization with Renewable energy:再エネを通じた互恵的な地方活性化を普及する協会。 主要省庁の政策動向を踏まえつつ、再エネと地域がともに発展していくことを目指し、東急不動産(株)、大阪ガス、Looop、東京ガス、リニューアブル・ジャパンで再エネを通じた互恵的な地方活性化を共同で検討することで合意した。 |
PPA | Power Purchase Agreement(電力販売契約):施設所有者が提供する敷地や屋根などのスペースに再エネ発電設備の所有、管理を行う会社(PPA事業者)が設置した再エネ発電システムで発電された電力をその施設の電力使用者へ有償提供する仕組み。
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JCI | Japan Climate Initiative「気候変動イニシアティブ」:2018年に、気候変動対策に積極的に取り組む企業や自治体、NGOなどの情報発信や意見交換を強化するため、ゆるやかなネットワークとして、105団体の参加で設立された。 |
PRI | Principles for Responsible Investment「責任投資原則」:2006年に国連の提唱により、国連環境計画と金融イニシアティブ、及び国連グローバル・コンパクトとのパートナーシップが打ち出した投資に対する原則。投資家に対して、企業の分析や評価を行う上で長期的な視点を持ち、ESG情報を考慮した投資行動をとることを求める。 |
生物多様性行動計画(BAP) | Biodiversity Action Planの略。生物多様性保全のための国家または企業等団体における行動計画。国家の場合、生物多様性条約(CBD)締結国は、第6条によりBAPの策定が求められている。 |
参考文献
- 世界経済フォーラム(2025) “グローバルリスク報告書2025”
- (株)東急不動産R&Dセンター、(株)石勝エクステリア、東京都市大学環境学部(横田・北村・吉崎・飯島)(2016)
「広域渋谷圏における生態系ネットワーク形成のための基礎調査」 - (株)東急不動産R&Dセンター、(株)石勝エクステリア、東京都市大学環境学部(横田・北村・吉崎・飯島)(2019)
「広域渋谷圏における生態系ネットワーク形成のための建物緑化の手引き」 - (株)石勝エクステリア(2020) 「2019年度 東急プラザ表参道原宿「おもはらの森」生きもの調査のご報告」
- (株)地域環境計画(2023) 「広域渋谷圏における生物多様性に資する生態系ネットワーク調査」
- 芹ケ沢誌編集委員会 (1990) 「芹ケ沢誌」
- 茅野市(1988) 「茅野市史 下巻 近現代 民俗 」
- (株)地域環境計画(2024)「東急リゾートタウン蓼科 自然共生サイト認定申請および自然資源の保全・活用に向けた自然環境基礎調査報告書」
本レポートの「脱炭素社会に向けた移行計画」等は以下を参照して作成しています。
- Task Force on Climate-related Financial Disclosures(TCFD)
- “Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures”
- “Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans”
- CDP
- “Climate Transition Plan: Discussion Paper”
- Transition Plan Taskforce(TPT)
- “The Transition Plan Taskforce Disclosure Framework Consultation”
- United Nations’ High‑Level Expert Group on the Net Zero Emissions Commitments of Non-State Entities(UN HLEG)
- “Integrity Matters: Net Zero commitments by Businesses, Financial Institutions, Cities and Regions”
- Task Force on Nature-related Financial Disclosures(TNFD)
- “Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures”





将来見通し等に関する注意事項
本資料に記載されている業績見通しなどの将来に関する記述等は、2025年2月現在、当社が入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基いており、当社としてのその実現を約束する趣旨のものではありません。実際の業績などは、さまざまな要因により大きく異なる可能性があります。