方針

方針
東急不動産ホールディングスグループは、事業活動における土地開発や資材調達などが生態系サービスに大きく依存していることから、生物多様性保全を重要な環境課題であると認識しています。
生物多様性の損失は、事業でこれまで享受してきた土地利用や建築資材調達などの生態系サービスの享受が困難となり、より大きなコストが必要となるリスクです。さらに、社会にとっても、人間の生活存続そのものが危ぶまれる非常に重要な課題です。
一方、当社グループにとって、生物多様性保全につながる住宅、オフィスビル、商業施設、リゾート施設などを開発、運営することは、事業機会の創出、競争力の向上につながると考えています。
こうした取り組みを推進するため、当社グループでは2011年に生物多様性方針を策定しました。その後の国内外の社会・政策動向やこれまでの当社グループの環境配慮と自然との共生の歩みを踏まえ、2023年8月、以下のとおり改定しました。
コミットメント
当社グループは「昆明モントリオール生物多様性枠組(GBF)」で定められた「ネイチャーポジティブ」を目指す国際的な目標を尊重し、取引先、お客さま、地域社会などのステークホルダーと協働しながら、生物多様性へのネガティブインパクトを回避・最小化し、ポジティブインパクトを拡大するための取り組みを推進します。
- 当社グループの事業における生物多様性への依存とインパクトをバリューチェーン全体で把握し、ネガティブなインパクトを削減・防止するとともに、自然へのポジティブインパクトを目指します。
- 不動産の開発・運営・管理においては、地域の生態系を把握したうえで、事業活動による生態系の損失を回避・最小化するとともに、都市におけるエコロジカルネットワーク形成や地域特性にあった保全取り組みを通じ、生物多様性の保全・再生と、来街者や施設利用者の快適性向上と調和した土地利用を目指します。
- 陸域/海域の30%を保全するというGBFのターゲットを尊重し、森林等の保全を進めます。
- ステークホルダーと協力し、環境や人権に配慮した持続可能な資源調達に取り組むとともに、サーキュラーエコノミーの考え方に基づく資源利用効率の向上に努めます。
- 生物多様性に関する取引先、地域社会、行政、お客さま、従業員等の多様なステークホルダーとのエンゲージメントを積極的に実施し、取り組みに反映させます。
- 事業上の意思決定に生物多様性の観点を統合するため、従業員を含む多様なステークホルダーの生物多様性、生態系サービスに関するリテラシーの向上に向けた教育・啓発に努めます。
タイトル
- 選択肢1
- 選択肢2
マネジメント体制

マネジメント体制
当社グループでは、生物多様性の課題に対し、代表取締役社長直轄の「サステナビリティ委員会」を設置しており、その下部組織である「サステナビリティ協議会」において、グループ横断的にマネジメントを進めています。
「サステナビリティ協議会」はグループ各社の環境・サステナビリティ担当者で構成し、共通の方針に基づき、生物多様性の課題について横断的に、取り組み実績の管理、情報共有を行うことで、事業活動を通じて取り組んでいます。
目標と取組み・実績
生物多様性に対するインパクトへの対応~2030年度KPI目標
都市部における数量目標
生物多様性の課題に対応するためには、都市緑化が重要であると考えています。そこで当社グループが開発重点エリアと定めている広域渋谷圏では、生態系を保全するために事業拠点において積極的な緑化を行っています。周辺の緑をつなぎ、そこに住む生き物たちの中継拠点を担うことで、広域渋谷圏のエコロジカルネットワーク形成に取り組んでいます。
建物緑化(屋上・壁面など)※ 2023年度実績100% 2030年度目標100%
- ※東急不動産(株)のオフィスビル・商業施設の新築大型物件


リゾート地等における数量目標
東急不動産ホールディングスグループでは、ホテル・リゾート事業、ヘルスケア事業を含むウェルネス事業地において、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標である30by30目標の数値を上回る40%の面積を保全します。「保全」された面積とは、①OECM認定その他の生物多様性・緑地保全系の環境認証を取得する対象土地の面積、②国立公園・国定公園・自然公園の区域内に該当する面積、③森林法に基づく森林経営計画の作成の対象となる森林を指します。
タイトル
- 選択肢1
- 選択肢2
事業地における計画管理
事業地における計画管理
生物多様性行動計画(Biodiversity Action Plan:BAP)
当社グループでは、すべての事業地域の中で特に保全上重要な場・種・機能をもつエリアを特定して生物多様性行動計画(BAP)を策定します。該当エリアについては、有識者による生物多様性モニタリングを定期的に実施した上で、その結果を管理計画に反映することで生物多様性の保全に取り組みます。
リゾートタウン蓼科では、別荘地およびその周辺の樹林地等において動植物の生息・生育環境を調査するモニタリングの計画を立て、希少な動植物種や生息・生育環境に対する脅威があれば対策を検討し、緑地の管理計画に生かしていく予定です。
「外来生物対策マニュアル」の設定

(外来植物)ヒメジョオン
「外来生物対策マニュアル」の設定
外来生物法(環境省)による「外来生物」とは、もともと日本に生息していなかった種であり、人間の活動により、意図的・非意図的に国内へ入ってきた動植物を指し、地域の生態系に影響被害を及ぼすおそれがあります。当社グループではマニュアルを設定し、侵略性の高い外来種を発見した際の対処を定め、地域の生態系の保全に取り組んでいます。
(外来生物)ヒロヘリアオイラガ
(外来植物)ヒメジョオン
タイトル
- 選択肢1
- 選択肢2
生物多様性リスク評価(生物多様性の生息環境の開示)《新規プロジェクト》

「東急プラザ表参道原宿」生態系調査の様子
生物多様性リスク評価(生物多様性の生息環境の開示)
~ プロジェクトにおける生態系調査の実施と緑化による生物多様性保全
《新規プロジェクト》当社グループでは、マンションやオフィスビル、商業施設などの建物を積極的に緑化することにより、周辺の緑をつなぎ、生物多様性に配慮したエコロジカル・ネットワークの形成に取り組むことで地域の生物多様性を保全しています。
タイトル
- 選択肢1
- 選択肢2
生物多様性リスク評価(生物多様性の生息環境の開示)《既存プロジェクト》
《既存プロジェクト》たとえば、商業施設「東急プラザ表参道原宿」の屋上テラス「おもはらの森」では、緑地の生態系の推移を把握するために、自然環境保全の専門家である(株)地域環境計画の協力のもと、1年を通じて定期的に生きもの調査を実施しております。

生態系調査の様子


生物多様性リスク評価(生物多様性の生息環境の開示)「東京ポートシティ竹芝 オフィスタワー」
「東京ポートシティ竹芝 オフィスタワー」では、生物とのふれあい・農体験などを通して、環境教育や環境負荷の低減に取り組んでいます。「雨・水・島・水田・香・菜園・蜂・空」の8つの景から成る「竹芝新八景」を展開することで、人々の生物多様性への認知と理解の向上を図ります。また、ハヤブサをはじめとする猛禽類の生息環境づくりに寄与するため、営巣のための巣箱を設置し、生物多様性や生態系の維持、改善に努めています。



生物多様性リスク評価(生物多様性の生息環境の開示)「たんばらスキーパーク」
「たんばらスキーパーク」では、群馬県および国際自然保護連合IUCNのレッドリストに、おのおの準絶滅危惧および軽度懸念として登録されたモリアオガエルの保護活動をしています。開発時にはモリアオガエルを保護するために生息している池を保存し、その後、池の清掃活動や水位が下がる夏場に水の補充をするなど、地域ボランティア団体(自然を愛する会)と協業して保護活動を毎年行っています。



パラオ共和国のリゾートホテル「パラオ・パシフィック・リゾート」前の海岸は、泥土の流出によりサンゴが生息しにくい海でしたが、綿密な調査に基づく海浜改修を行い、生物が豊富な海の再生に成功しました。2002年にホテル全面の海は州条例により海洋生物保護区に指定され、現在では多くの種類の魚やサンゴを見ることができる絶好のシュノーケリングエリアとなっています。2010年4月には、30名以上のお客様と共に、30個の大シャコ貝をホテルのビーチに移植しました。また、パラオ国内の全小中学生を対象としたパラオ近海に生息し絶滅危惧種であるジュゴン保護のための教育イベント「ジュゴンウィーク」の開催にも協賛しています。


生物多様性認証制度への参加
生物多様性認証制度への参加
体系的導入
30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)とは、2021年6月に英国で開催されたG7サミットにおいて約束された、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。東急不動産ホールディングス㈱と東急リゾーツ&ステイ㈱はこの趣旨に賛同し、30by30アライアンスに参加しています。例えば、東急リゾートタウン蓼科では、660haに及ぶ広大な森林に対して森林経営計画を立て、2018年から保全間伐を行っています。
ABINCの取得
東急不動産(株)では、特に周辺に自然環境が多く敷地内にも多くの緑地確保が可能な物件においては、生物多様性の確保を後押しするためにもABINCなどの認証を取得することを奨励しており、今後も拠点を体系的に広げていきます。
生物多様性認証制度への参加実績 ~ 「JHEP認証」の最高ランク(AAA)を取得

「二子玉川ライズ」
「JHEP認証」の最高ランク(AAA)を取得
東急不動産(株)は、東京急行電鉄(株)(現:東急(株))と共同事業の商住複合施設「二子玉川ライズ」において、(公財)日本生態系協会による生物多様性評価認証制度「JHEP認証」の最高ランク(AAA)を取得しています。建物のルーフガーデンに、菜園広場やめだかの池など大規模な屋上緑化施設を含む「水と緑の公開空地」を整備し、周辺の豊かな自然環境と調和した街づくりをめざしています。



タイトル
- 選択肢1
- 選択肢2
生物多様性の損失を軽減するために行っている対話
生物多様性の損失を軽減するために行っている対話
政府との対話
東急不動産ホールディングス(株)は、環境省が主催する"2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することの達成を目指す”アライアンス「30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)」に参加し、生物多様性の損失の軽減に取り組んでいます。
NGO等との対話
東急不動産ホールディングス(株)は、経団連自然保護協議会に加盟し、現地の企業やNPOとの交流等により、自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現を目指しています。自然保護協議会では、2022年2月に「タイ・ナコンシタマラート県サブア・タサラ地区における大規模マングローブ植林事業」におけるマングローブ植林大作戦連絡協議会とオンラインにて対話を行いました。
また、2024年11月に公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)とサステナブル調達方針の改訂にあたって森林保全についてダイアログを行い、当社グループの環境取り組みへのご意見や、持続可能な木材調達の考え方などの情報共有など、今後のサステナブル調達における推進活動への助言をいただきました。
現地との対話
東急リゾートタウン蓼科は、長野県と自然保護協定を締結し開発した複合型リゾートです。現在では、地域行政などと包括連携協定を締結し、バイオマスボイラー導入等の取組みにより間伐を促進するなど、生物多様性保全への取り組みを強化しています。